盛山文科相 疑惑拭えぬのなら辞任を(2024年2月14日『熊本日日新聞』-「社説」)

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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求した盛山正仁文部科学相が、教団から選挙支援を受けていた疑惑が浮上し、国会で釈明に追われている。盛山氏は野党の辞任要求を拒否しているが、答弁内容はあいまいだ。疑惑払拭には程遠いと言わざるを得ない。
 

 盛山氏は、宗教行政を所管する文科省のトップとして、信者の高額献金問題で批判を浴びている教団を追及する立場にある。にもかかわらず、過去に教団側とのつながりがあったとすれば、公正性や適格性が問われよう。選挙支援の内容について「記憶にない」と連発したり、説明が二転三転したりするようでは、閣僚としての資質にも疑問が残る。

 解散命令を巡っては、東京地裁で教団と実務を担う文化庁の意見を聴く初の審問が22日に迫っている。宗教法人にとって「死刑」に相当する解散命令に向けた手続きに曇りがあってはならない。教団との関係について国民が納得するような説明ができないのであれば、盛山氏は辞任すべきだ。

 盛山氏は、教団との接点に関する2022年の自民党調査には、関連団体の会合に1度出席し、あいさつしたとだけ回答していた。23年9月の文科相就任時の記者会見でも同様の説明をし、同年の共同通信のアンケートでは選挙支援は「ない」としていた。

 しかし、一部報道によると、盛山氏は21年10月の衆院選公示直前、地元の神戸市で旧統一教会関連団体の会合に出席し、推薦状を受け取った。その際、教団側が掲げる政策に賛同する旨の推薦確認書にも署名したという。選挙期間中は教団信者でもある関連団体の会員10~20人が連日、盛山氏の事務所を名乗って有権者に電話で投票を呼びかけた。団体側も支援状況を盛山氏の事務所に報告したとされる。

 盛山氏は、会合に参加して推薦状を受け取ったことに関しては、写真があることを理由に事実上認めた。一方、教団側との政策協定とも言える推薦確認書への署名については、7日の衆院予算委員会で「サインしたかもしれない」と答弁したが、翌日には「記憶が全くない」と修正した。事務所への支援状況報告は「確認できない」と述べた。教団との関係をごまかしているようにも映る。

 このままでは、解散命令請求の審理で、文化庁側の主張・立証について、盛山氏が何らかの判断をするたびに、疑いの目が向けられることになろう。審理に悪影響が出れば、被害者救済に全力を尽くすという政府方針の信頼性も揺らぎかねない。

 深刻な事態にもかかわらず、岸田文雄首相は野党の更迭要求を拒否し「自ら説明責任を果たしてもらいたい」と繰り返している。既に教団との接点の一部が分かっていた盛山氏を文科相に起用した自身の任命責任を軽く受け止めているのではないか。岸田首相は事実関係を解明し、対処を決断する義務があることを認識すべきだ。