石川県の能登半島北部を襲った記録的大雨で亡くなった輪島市の中学3年喜三翼音(きそはのん)さん(当時14歳)の家族らが28日夜、大阪府堺市の親類宅に集まり、「誕生日会」を開いた。翼音さんは12月28日生まれ。「はのん 大好きだよ」と書かれたケーキを前に、父の鷹也さん(42)は「翼音もきっとここにおるな」と天国のまな娘を思った。(能登支局 高野珠生)
誕生日会は「翼音が15歳になれなくても、大切な一日に変わりはない」と、堺市に住む鷹也さんの妹、松本志穂理さん(34)が提案し、志穂理さん宅で開いた。鷹也さんは「わいわい過ごせたら翼音も喜んでくれるはず」と参加。おしゃれに興味を持ち始めていた娘のため、プレゼントはディオールの化粧水にした。
ケーキは、8歳の誕生日に翼音さんが「おいしい」と言っていたのを志穂理さんが思い出し、同じ店のものを用意した。志穂理さんの長男、弓槻(ゆづき)ちゃん(2)が歌を歌い、みんなでろうそくを吹き消した。
鷹也さんは志穂理さんから、翼音さんとの思い出話を聞いた。おそろいのサンダルやヘアクリップを買ったこと。メイクやヘアアレンジを教えてあげると、最近は一人で上手にできるようになっていたこと……。
志穂理さんあての翼音さんの手紙も見せてもらった。鷹也さんは「全部流されちゃったけど、翼音も志穂理からの手紙、大事にしとったよ」とつぶやいた。
あの日から3か月がたった。「もう随分長く会っていないような気がする」と鷹也さん。正月は石川県野々市市の自宅で、祖父母ら家族と静かに過ごすつもりだ。