16歳での涙のヌード、三谷幸喜との16年の結婚生活、“共演者キラー”な一面も…小林聡美(59)の「スロー&SNSとは無縁」な女優人生(2024年12月15日『文春オンライン』) 

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小林聡美 公式サイトより
 NHK BSで放送されていた「団地のふたり」で、小泉今日子と息の合ったかけあいを見せ「こんな年の取り方ができたら最高」と称賛を浴びた小林聡美(59)。
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 2025年1月にスタートする上白石萌音主演のドラマ『法廷のドラゴン』(テレビ東京系)への出演も決まっている。
 小林聡美は1965年5月24日生まれ、東京都葛飾区出身。14歳で武田鉄矢主演の『3年B組金八先生』のオーディションを受けて合格。丸顔で愛嬌のある姿で人気を博した。
16歳で見せた「衆人環視の中でタオルを開いてヌードになる力演」
 転機は16歳で主演した映画『転校生』(82年)。大林宣彦監督の「尾道三部作」第1作で、石段から転げ落ちたショックで体と心が入れ替わってしまった中学生男女のラブストーリーだ。
 小林はこの作品が映画初主演だったが初ヌードを披露。オーディションの際、涙目で指を4本立てて「これだけなんですね?」と聞いた姿が決定打になったという。「4」は映画の中でヌードになるシーンの数だった。
 作品の性質上、男性俳優との絡みはなく、自分の体が女性に入れ替わっていることに気づかない主人公の滑稽さを表現するためのヌードなので、セクシーさは皆無だが、それでもやはりドキッとさせられる。
 水泳部の合宿シーンでは、自分の体が女性になっていることに気づかず、胸の水着をつけ忘れたまま羽織っていたタオルを開き、衆人環視の中でバストトップをさらけ出すのだが、仕草がいかにも男の子然としていて、笑いの中にも演技力が光る。
 デビューからわずか2年、しかも全国公開の映画で16歳の女子がヌードになるには相当な覚悟と矜持が必要だったに違いないが、その気持ちは報われ、第6回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。その後、テレビドラマのオファーが次々と舞い込んだことは言うまでもない。
 そんな彼女の第2の、そして人生の転機になったのが23歳で出演したフジテレビ系の深夜ドラマ『やっぱり猫が好き』だ。
 もたいまさこ室井滋、小林演じる個性あふれる3姉妹の会話劇だが、これが口コミ的に話題になり大ヒットシリーズに。3姉妹の末っ子を演じた小林はアドリブも交え、先輩2人との息もぴったりだった。
 そしてこのドラマが、のちに結婚する三谷幸喜との出会いだった。ドラマから4年後、小林が30歳の時、3歳上の三谷と結婚する。
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 それまで小林の恋愛話やスキャンダル等が報道されたことはほとんどなく、突然の電撃入籍発表は当時大いに世間を驚かせた。結婚発表記者会見も2ショットで行われ、三谷が「あまり友達のやってくる家庭にはしたくない。人が寄りつかない家庭がいいですね」と語れば小林が「はい、同じです」と答えるなどのやりとりは、おしどり夫婦の印象を強めた。
 なれそめは三谷のひと目惚れで、小林の初対面の三谷の印象は「暗い方かな?」だった。三谷がドラマの打ち上げで意を決して渡した電話番号のメモも小林はもらったことすら忘れており、小林が三谷の想いに気づくまでじつに4年もかかったという。ひょっとしたら恋愛やスキャンダル報道がなかったのは小林のこの天然っぷりが理由だったのかもしれない。
 しかし、結婚生活は16年で終焉を迎えることに。2人がマスコミに送った連名のFAXの中で「これといったはっきりした理由があるわけではありません。(中略)小さな違いが積み重なり、それがだんだん大きくなってしまったようです」と説明した。
 離婚後も2人で愛犬を散歩させている姿が目撃されたこともあるが、これは三谷の強い希望だったという。三谷は2年後に19歳下の元女優と再婚したが、小林は現在まで独身を貫いている。
共演した市川実日子とプライベートで仲良くなり、顔も隠さず2人で散歩
 小林はその後も共演者やスタッフと仲良くなったというエピソードに事欠かない。
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 38歳でドラマ初主演した『すいか』(日本テレビ系)で共演した市川実日子(みかこ)とすぐに意気投合し、プライベートでもよく一緒に過ごしていた。当時、筆者は三谷と小林が住んでいた家の近くに住んでいたのだが、駅前で小林さんと市川さんが2人で歩いている姿をよくお見かけしたものだ。
 特に顔を隠す様子もなく、通行人も「『すいか』のふたりだ」と気づくのだが、2人は気にせず談笑していた。市川とはのちに映画『めがね』(07年)でも共演している。
 41歳では映画『かもめ食堂』(06年)に主演し、スローライフを描いた作風が当たり役となり、『めがね』に続いていく。以後しばらく、小林のイメージは“スローライフの似合うベテラン女優”となる。
 小林は自身の私生活についてイメージ通りの“静かさ”だと話したことがある。
「スローにとは思いませんが、いろいろなものが同時進行しているところにいると、気持ちが落ち着かないというのはあります。なので、ご飯を食べるときはご飯を食べる。テレビを見るときはテレビを見る。ザーッと流れているのは好きじゃないんです。私の生活は、静かですよ(笑)」(「クランクイン!」インタビューより)
「自分の性格としては、向いていないな、と思ったりします」
 女優だけでなくエッセイストや俳人として活動したり、45歳の時には社会人入試に合格して大学生になり、卒業後は大学院に進学。芸能活動一本の生き方は選ばなかった。最近では珍しく、SNSを1つも持っていない女優でもある。
「この仕事をやらなくなってからの人生を“どうやって生きようか? 一体何が出来るんだろう?”みたいなものは考えます。(中略)今って、様々なことを発信する世の中ですよね。だけど『自分は、自分は』って感じの生き方は、私は苦手なんです」(「otocoto」インタビューより)
 これだけのキャリアを築きつつ、「映画・ドラマ女優に向いていない」と発言することも多い。
「自分の性格としては、向いていないな、と思ったりします。性格的に、褒められても『いやいやそんなはずは』と思うし。うーん、もしかしたらそういう人が俳優をやっているのかもしれないですね。こんなに長く続けていて『実感がない』というのも無責任ですけど、深く考えずにここまでやってきてしまいました(笑)」(「CREA WEB」インタビューより)
 今年4月には、チャッピー小林名義で人生初のコンサート「チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ」を開催。ゲストに俳優の阿部サダヲを迎え、全16曲を堂々と歌いあげた。ずっとやりたかったピアノの稽古もはじめたといい、次はピアノコンサートにチャレンジするのかもしれない。来年還暦を迎える自然体から何が出てくるのか、楽しみに待ちたい。
岩佐 陽一