絵本「ぐりとぐら」 名作は永遠に。(2024年10月19日『産経新聞』-『産経抄」)

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中川李枝子さん
 人によって違うのだろうが、藤沢周平の「獄医立花登手控え」や池波正太郎の「剣客商売」といったシリーズものの時代小説などは、何度読み返しても楽しめる。しばらく時間を置いて再読すると、細かい筋立てはきれいに忘れているので、新鮮な気分で味わえるからである。
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▼馬齢を重ね、記憶力の衰えを自覚し始めた身ではそうだが、幼子が同じ絵本を繰り返し読んでとせがむのはなぜだろう。すっかり筋書きも文章も暗記しているにもかかわらず、目を輝かせて夢中でページをめくる。大人には分からない楽しみがあるらしい。
▼数ある絵本の名作のうち、抄子が幼い頃に愛読していた双子の野ねずみが主人公の「ぐりとぐら」で知られる児童文学作家、中川李枝子さんが亡くなった。保育士を務めながら創作を始めた中川さんは、きっと子供たちの気持ちと喜ぶ物語が分かっていたのだろう。
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▼絵本は想像力を育み、言語能力を高めて感情表現を豊かにし、集中力を向上させるなどさまざまな効果がある。また、その読み聞かせは親子関係を深めるという。幼児の頃から絵本に慣れ親しめば、その後の読書習慣にもつながるのではないか。
▼9月21日の小欄では、月に1冊も本を読まない人の割合が過去最高の62・6%となった(文化庁調査)ことを紹介した。気付くとコンビニエンスストアの書籍コーナーが縮小し、書店そのものが消えていく。絵本に熱中してとりことなった記憶を、人はいつ忘れてしまうのだろう。
▼「ぐりとぐら」はもちろん、自分の子供らにも買い与え、読み聞かせた。中川さんが作詞したアニメ映画「となりのトトロ」のオープニング曲「さんぽ」は子供らが何度も合唱していた。名作は永遠だと信じたい。

中川李枝子さん
 人によって違うのだろうが、藤沢周平の「獄医立花登手控え」や池波正太郎の「剣客商売」といったシリーズものの時代小説などは、何度読み返しても楽しめる。しばらく時間を置いて再読すると、細かい筋立てはきれいに忘れているので、新鮮な気分で味わえるからである。
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▼馬齢を重ね、記憶力の衰えを自覚し始めた身ではそうだが、幼子が同じ絵本を繰り返し読んでとせがむのはなぜだろう。すっかり筋書きも文章も暗記しているにもかかわらず、目を輝かせて夢中でページをめくる。大人には分からない楽しみがあるらしい。
▼数ある絵本の名作のうち、抄子が幼い頃に愛読していた双子の野ねずみが主人公の「ぐりとぐら」で知られる児童文学作家、中川李枝子さんが亡くなった。保育士を務めながら創作を始めた中川さんは、きっと子供たちの気持ちと喜ぶ物語が分かっていたのだろう。
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▼絵本は想像力を育み、言語能力を高めて感情表現を豊かにし、集中力を向上させるなどさまざまな効果がある。また、その読み聞かせは親子関係を深めるという。幼児の頃から絵本に慣れ親しめば、その後の読書習慣にもつながるのではないか。
▼9月21日の小欄では、月に1冊も本を読まない人の割合が過去最高の62・6%となった(文化庁調査)ことを紹介した。気付くとコンビニエンスストアの書籍コーナーが縮小し、書店そのものが消えていく。絵本に熱中してとりことなった記憶を、人はいつ忘れてしまうのだろう。
▼「ぐりとぐら」はもちろん、自分の子供らにも買い与え、読み聞かせた。中川さんが作詞したアニメ映画「となりのトトロ」のオープニング曲「さんぽ」は子供らが何度も合唱していた。名作は永遠だと信じたい。



双子の野ねずみが主役の人気の絵本シリーズ『ぐりとぐら』で知…(2024年10月19日『東京新聞』-「筆洗」)
 
 双子の野ねずみが主役の人気の絵本シリーズ『ぐりとぐら』で知られる児童文学作家の中川李枝子(りえこ)さんは子どものころ、みなしごに憧れたという
▼自分のように父母のいる子の未来はきっと平凡。物語に出てくる波瀾(はらん)万丈の子がうらやましかったそうだ。本好きの子らしい発想。古今東西の児童文学の名作をそろえる岩波少年文庫などに夢中になったという
▼中川さんが89歳で亡くなった。作品を子どものころに読み、親になって子に読み聞かせた人も多かろう
文学少女は長じてすぐに筆をとらず20歳で保育士に。やがて子どもたちを楽しませるため、物語を作り始めた。『いやいやえん』は「いやだ、いやだ」と何かと駄々をこねる保育園児が何をしても叱られない施設・いやいやえんに連れていかれ、心境が変わる話。駄々っ子らと向きあったから生まれた物語だろう
キャプチャ
▼同じ保育園に17年勤務。神経質な子、のんきな子など子の個性はさまざまという。一人一人が面白く、くせ者。「今をより愉快に素晴らしく過ごそうと精いっぱい生きている」と映った。昔、波瀾万丈の人生を夢見た人の才を花開かせたのは、ごく平凡にも見える子どもたちだったらしい
▼「子どもはちょっと見てもかわいいけれど、できるものなら一日、朝から晩までじっと見ていたい」と願っていた。子どもへの深い愛があったから本は子どもに愛された。