半年前の「野党共闘」が崩壊した東京15区リポート 立憲と共産が競合、「最年少」狙う自民新人ら5氏の戦い(2024年10月18日『東京新聞』)

 
 衆院選で野党間の候補者調整が難航し、各地で競合する構図があふれる中、半年前の補選で立憲民主党共産党が共闘したばかりの東京15区でも、両党が一転して争う形になった。自民党は25歳の新人を立て議席奪還を期し、元参院議員の無所属新人らも絡んで混戦模様となっている。

◆「意地張ってんじゃねえよ」「うちだけ歩み寄れ、はない」

 「市民と野党の共闘をこれまでやらせていただいた。今回は共産候補が出ているが、市民の声を代弁していくと変わらず訴えたい」
街頭で支援を呼びかける立候補者=17日、東京都江東区で

街頭で支援を呼びかける立候補者=17日、東京都江東区

 公示日の15日、立民前職の酒井菜摘は第一声の後、報道陣に語った。「まっとうな政治」を訴え、補選では共産委員長の田村智子も一緒に街頭に立った。それが、今回は「野党共闘」がご破算に。酒井陣営は「ポスター貼りや電話かけなど何から何まで人手が足りない。組織戦ができない」と悲鳴をあげる。
 背景には安保法制を巡る両党の隔たりがある。共産は安保法制の廃止を共闘条件の第一に挙げてきたが、立民代表の野田佳彦が慎重な姿勢を示し、決定的な溝が生まれた。
 「(共闘しなければ)自民を利するだけ。意地張ってんじゃねえよ」。共産側に酒井への一本化をぎりぎりまで働きかけてきた市民団体「江東市民連合」のメンバーは憤る。一方の共産関係者は「江東区の共産支援者は、原則を大事にする。共闘は政党間の約束。うちが歩み寄れっていうのは、ない」と突き放した。
 共産が擁立した小堤東は、共闘のために4月の補選と2021年の衆院選で2回続けて立候補を断念した経緯もある。陣営関係者は「前回は選挙10日前におろされた。『今回は大丈夫だよね』との声を支援者から多くもらっていた」とも明かす。

◆25歳自民新人 裏金問題「私は全く関係ない」

 同区選出の衆院議員が相次いで逮捕された自民。25歳の大空幸星を擁立し、イメージ刷新に躍起だ。
 「自民期待の新人。今度は間違いない」。公示前の6日、東京メトロ豊洲駅前の演説で、自民区議が訴えた。党選対委員長の小泉進次郎も駆けつけ「当選すれば最年少の国会議員」「自民っぽくない」と強調した。
 孤独・自殺対策で無料チャット相談を行うNPO法人「あなたのいばしょ」を学生時代に立ち上げた。Z世代の論客として知られ、「悩みを聞き、支援に携わるうち限界を感じた。そもそも悩まなくていい国をつくりたい」と訴える。
 党派閥の裏金問題を巡っては「私は全く関係ない」と強調。陣営には複数の国会議員の元秘書らが入り、公明の推薦も受けた。
 ただ、有権者からは冷めた言葉も。17日に区内を歩いていた男性(71)は「『いいかげんにせえよ』と言いたい。これまでろくな人物がいなかった。まっとうな人を選びたい」。

◆元参院議員は「地元」強調、「民間の当たり前を国政に」と新人

 4月の補選で次点だった無所属新人の元参院議員須藤元気は、既存政党に対する批判の受け皿として、無党派層の取り込みを狙う。「落下傘に冷たい」(地元区議)とされるエリアで、「江東区生まれ、江東区育ち」をアピール。元格闘家の知名度に加え、補選後はほぼ毎朝、街頭に立って「ドブ板選挙」に徹し、消費税減税を訴える。
 日本維新の会を離党し、3回目の挑戦となる無所属新人の金沢結衣は「民間の当たり前を国政に」と訴えている。(敬称略、井上真典)

 衆院東京15区 東京都江東区の全域がエリア。衆院小選挙区の区域が一つの自治体だけで完結し、分割もされないのは全国的にも少ない。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件や、2023年4月の江東区長選での買収事件で、自民党衆院議員が相次いで逮捕された。買収事件に伴う議員辞職で行われた今年4月の同区補選で、自民党は候補者擁立を断念した。今月14日現在の選挙人名簿登録者数は、43万3451人。

◆東京15区 立候補者(届け出順)
小堤  東 35 共産  新
須藤 元気 46 無所属 新
酒井 菜摘 38 立民  前① 
大空 幸星 25 自民  新
金沢 結衣 34 無所属 新
 
衆院選2024