茨城県利根町布川で1967年に男性が殺害された「布川事件」で再審無罪が確定し、昨年亡くなった桜井昌司さんの妻の恵子さん(72)が、冤罪(えんざい)被害者救済に向けた再審制度の早期改正を求める活動を続けている。9月26日にあった「袴田事件」の再審判決も現地で見守り、「当たり前のことが当たり前に認められる社会にしたい」と力を込める。
日弁連によると、再審制度は刑事訴訟法で定められ、70年以上改正されていない。「開かずの扉」とも呼ばれ、再審に向けたハードルの高さや時間がかかることなどが課題に挙げられている。袴田事件では、最初の申し立てから再審決定までに40年以上かかった。
布川事件では、桜井さんと杉山卓男さん(故人)が2011年に再審無罪を勝ち取ったが、判決で裁判所から謝罪やねぎらいの言葉はなく「うれしいけど何かが残った」と振り返る。
心の底から喜べたのは、桜井さんが検察と警察による捜査の違法性を訴え国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決。裁判官が「著しく酷である」と認めると、「夫が訴え続けてきたことがやっと認められた」と涙を流した。
再審制度改正に向けた活動を本格的に始めたのは桜井さんが亡くなった後。遺品整理をしていると、全国の受刑者から「自分も冤罪です。助けてください」と訴える手紙が何通も見つかり、「俺だけが勝てばいいわけじゃない」と語っていた桜井さんの姿が脳裏に浮かんだ。夫の遺志を引き継ごうと決意すると、冤罪を訴えながらも収監されている受刑者の支援活動に乗り出した。