コロナ予防接種 正確な情報、理解の上で(2024年10月7日『東京新聞』-「社説」)

 高齢者らを対象とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種が10月から始まった。感染症には予防接種が有効な対策の一つ。政府は接種に関して正確な情報を丁寧に説明し、不安の解消に努めるべきだ。
 新型コロナワクチンは、無料の特例臨時接種が3月末で終了。10月からの定期接種は65歳以上と基礎疾患のある60~64歳の人らが対象で来年3月まで実施される。
 接種費用は約1万5千円だが、自己負担が最大7千円となるよう政府が助成する。対象外の人は全額自己負担となる。自治体は費用助成を上乗せするなど、接種しやすい態勢を整えてほしい。
 今夏の流行では入院患者のほとんどが60代以上だった。ワクチンには重症化予防効果があり、重症化リスクが高い高齢者らには依然重要な対策だ。懸念される冬季の流行に備えたい。
 使用されるワクチンはオミクロン株の「JN・1」に対応する5製品。従来のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに加え、新たな仕組みの「レプリコン」ワクチンが世界で初めて実用化された。投与されたmRNAが体内で増えることが特徴で従来のワクチンよりも摂取量が少量で済む。
 レプリコンワクチンについては体内で増えたmRNAが体外に排出されるという情報が一部で広がり、混乱も起きている。厚生労働省は最終的には体内で分解されるため接種した人から他人に広がる科学的知見はないと説明する。
 ワクチンは一定割合で発熱や倦怠(けんたい)感など副反応を伴い、不安を感じる人がいるのも当然だ。
 ワクチンは安全性と有効性が確認された上で薬事承認されているものの、多くの人が長期間接種すると、承認前には分からなかった影響が判明する可能性もある。
 政府と製薬企業はワクチンの仕組みや安全性に関する情報を丁寧に説明するとともに、ワクチン市販後も安全性や有効性を徹底的に監視しなければならない。
 私たちもかかりつけ医らと相談し、感染予防と副反応というメリットとリスク双方を理解した上で接種するか否かを判断したい。