斎藤前知事「票が割れて再選」の現実味に維新と自民がブチ切れ《人気YouTube番組に生出演で意外な人気急上昇》(2024年10月4日『現代ビジネス』)

演説にも人がどんどん集まって
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兵庫県の斎藤元彦前知事は、9月30日から毎朝兵庫県内の駅頭に立ち、出直し選挙に備えている。
10月3日、斎藤氏がJR芦屋駅前の歩道橋で演説しているところを「現代ビジネス」記者は見つけた。事前に告知されてはいなかったものの、斎藤氏を目当てに10人以上の聴衆が集まっていた。
雨が降りしきる中、斎藤氏は「おはようございます。いってらっしゃい」と声をかける。すると、「あれ、斎藤知事やん!」とスマートフォンで撮影したり、握手を求める人も出てきた。
「選挙、頑張って!」という市民に対しては「いや、まだ先ですが、ありがとうございます」と斎藤氏は答える斎藤氏。雨の中、テレビカメラも複数並び、聴衆は30人を超えていた。瞬く間に「斎藤劇場」と化しているのだ。
斎藤氏の意外な人気は、馬鹿にすることはできない。そうした報道をスマートフォンで見ながら暗い表情で語るのは、兵庫県自民党県議・X氏だ。
「悪名は無名に勝るというが、まさにその通り。出直し選では、絶対ダメと思ってきた斎藤が浮上しかねない展開になっている。もし斎藤に負けたら、自分も県議失格だ」
兵庫県知事選は、10月31日告示、11月17日投開票で実施される。日本維新の会清水貴之参議院議員、前尼崎市長の稲村和美氏、共産党推薦の大澤芳清氏、元経産省官僚の中村稔氏らがすでに出馬を表明している。
三つ巴の選挙になるが
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兵庫県は、斎藤前知事のおかげで、すっかり有名になってしまった。立候補についても問い合わせが多くきており、候補者もかなりの数にのぼるのではないか。7月の都知事選なみの大混戦になるかもしれない」(兵庫県幹部)
県議会での最大会派自民党は、前回の2021年の知事選では斎藤氏を推薦したこともあり、今回は擁立見送りを決定。公明党も自主投票となる方向だという。
前出のX県議が危惧するのは、立候補者が乱立して票が分散し、当選ラインがグッと下がることだ。無党派層の票が大きく影響し、当選ラインが下がると斎藤氏が再び当選する可能性がある。
自民党と同様、前回は斎藤氏を推薦した維新は、今回元民放局アナウンサーで知名度があり、資金力も豊富といわれる清水氏をたてる。
斎藤氏、清水氏に加え、立憲民主党系の県議会会派が支援する稲村氏の3人が選挙の中心となる見込みだが、前出のX県議は、こう語る。
「清水氏はアナウンサーとして人気があり、名前が売れていることで、衆院転身から知事選にまわった。この清水氏が一番人気で堅い候補だと思っていたのだが、今の状況をみていると、立候補者の中ではすっかり名が売れた斎藤氏が、けっきょく一番知名度がありそうだ。誰もが決め手がない中で、投票率いかんでは斎藤氏が再選されるということは十分にあり得る。私としてはもうこりごりなんやけど……」
維新は大阪府の吉村洋文知事も「辞めるべき」と進言したと記者会見で語っている。維新の県議のひとりは言う。
「斎藤氏のパワハラ、おねだりなどすべて維新が悪いというのが地元の世論。維新の本部が解散総選挙も前提があって決めたというが、今回の知事選は一回休みにしてほしかった。それほど維新人気は斎藤知事のおかげで下がっている」
斎藤氏の「再選」を警戒しているのだ。齋藤氏によれば、今後も駅頭ので「朝の挨拶」は継続していくという。
騒動以来、これまでずっと「悪役」だった斎藤氏だが、最近になってX(旧ツイッター)では《斎藤知事がんばれ》《斎藤知事負けるな》など、斎藤氏を擁護するどころか応援する投稿が急増し、トレンドにランクインすることもある。
石丸ショックの再現か
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これはどこかで見た光景ではないか。今年7月、東京都知事選で小池百合子氏に次ぐ2着となり旋風を巻き起こした、前安芸高田市長の石丸伸二氏の雰囲気を想起させる。選挙序盤は小池氏と立憲民主党蓮舫氏の争いかとみられたが、終盤になり、石丸氏がSNSで旋風を巻き起こし、急上昇。瞬く間に蓮舫氏を追いぬき、小池氏に迫った。
そのツールとなったのが、YouTubeとXだった。斎藤知事のXアカウントのフォロワーは文書問題で大炎上した今年3月で3万人程度。それが9月26日の失職、出直し選挙会見で6万人超となり、現在は10万人の大台を突破。
そして10月3日、斎藤氏は午後9時から、人気YouTubeチャンネル「ReHacQ」(リハック)に《【10/3緊急生配信】斎藤元彦・前兵庫県知事が激白...パワハラの真相は?》と題して生出演。
内部告発で「兵庫県政が混乱を招いたので申し訳ない」と述べるも、「辞職はすべきでない」「県民の皆様にやるべきことをやってきた」とこれまで同様、抗弁を重ねた。
石丸氏も、安芸高田市長時代からリハックに何度も出演し、都知事選でも連日のように動画配信を行っていた。「切り抜き動画」としてさらにアップされ、拡散された。中には一つの動画につき100万再生を超す視聴数もあった。その結果、小池氏に迫る「石丸ショック」へとつながったのだ。
ちなみにこの石丸氏は、かつてリハックに出たとき、斎藤氏の「おねだり」疑惑について言及していた。石丸氏自身も、安芸高田市に練習拠点があるJリーグサンフレッチェ広島のユニフォームが毎シーズンもらえるとしてこう擁護している。
「(ユニフォームは)市長としてもらって、それをを着て応援し、サポートしている。市長をやめて置いてきても、石丸と名前が入っているのでもらってきた。悪意をもって貶めようとすれば、なんぼでもできる。そっち(おねだり)をとりあげるのはもういいんじゃないか……」
そのリハックに齋藤氏が出演するのは何かの因縁といえようが、前出の維新の兵庫県議はこう語る。
「斎藤氏が石丸氏のようにリハックに出るのは嫌な感じがする。石丸氏のマネをして、知事選を勝とうという魂胆のようにみえる。
大混戦の兵庫県知事選で再選を狙う斎藤氏だが、その手本は石丸氏となるのか?