立憲民主党の新しい代表に選出された野田元総理大臣は記者会見し、あすの午前中までに党役員の骨格となる人事を決めるとした上で「私にない刷新感をどうやってつくっていくかは1つの重要な観点だ」と述べました。
この中で、野田氏は、党の役員人事について「これからよく考えたいが骨格人事が決まらなければ次の国会や衆議院選挙の準備ができない。あすの午前中までには骨格人事を決定をした上で午後にでも両院議員総会で承認をいただきたい」と述べました。
その上で「私にない刷新感を骨格人事の中でどうやってつくっていくかは1つの重要な観点だ」と述べました。また、野田氏は、ほかの野党との連携について「あすは骨格人事で時間を要すると思うが、それ以降は、各野党にあいさつ回りをしてそれをスタートにそれぞれの野党と誠意ある対話を続けたい。誠意ある対話の中からどういう結論が出せるかだ」と述べました。
さらに、次の衆議院選挙での獲得議席の目標について「自民・公明両党の議席を過半数割れに追い込む。そのために野党の議席を最大化するというのが現実的な戦略だ」と述べました。そして、候補者の擁立作業について「まずは『裏金大物議員』の選挙区で有力な候補者をあてられていない選挙区があるので、そこをまず埋めていく」と述べました。
代表選挙の詳細
立憲民主党の代表選挙は、1回目の投票で4人の候補者がいずれも過半数のポイントを獲得できず、上位2人による決選投票が行われた結果、野田元総理大臣が枝野前代表を抑えて新代表に選出されました。
代表選挙には、野田元総理大臣、枝野前代表、泉代表、吉田晴美氏の4人が立候補して国会議員と国政選挙の公認候補予定者、地方議員、それに党員・サポーターに割り当てられたあわせて740ポイントを争い、今月7日から選挙戦が展開されました。
23日は午後1時から東京・港区のホテルで臨時党大会が開かれ、22日までに締め切られた地方議員と党員・サポーターによるいわゆる「地方票」の結果が発表されたのに続き、国会議員と公認候補予定者の投票と開票が行われました。
1回目の投票結果
▽野田氏
国会議員 90ポイント
公認候補予定者 38ポイント
地方議員 58ポイント
党員・サポーター 81ポイント
合計267ポイント
▽枝野氏
国会議員 66ポイント
公認候補予定者 17ポイント
地方議員 71ポイント
党員・サポーター 52ポイント
合計206ポイント
▽泉氏
国会議員 58ポイント
公認候補予定者 26ポイント
地方議員 33ポイント
党員・サポーター 26ポイント
合計143ポイント
▽吉田氏
国会議員 56ポイント
公認候補予定者 17ポイント
地方議員 23ポイント
党員・サポーター 26ポイント
合計122ポイント
決選投票の結果
野田氏が枝野氏を抑えて新代表に選出されました。
一方、国会議員や公認候補予定者で23日の臨時党大会を欠席した人もいました。
野田新代表「私は本気で政権を取りに行く覚悟だ」
野田佳彦氏のこれまで
新代表に選ばれた野田佳彦氏は衆議院千葉4区選出の当選9回で、67歳。
松下政経塾出身で、千葉県議会議員を経て1993年の衆議院選挙に当時の日本新党から立候補して初当選しました。
2011年に民主党政権として3人目となる総理大臣に就任し、よくとしには、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革の関連法を成立させましたが、直後の衆議院選挙で敗北し、政権を失いました。
その後、無所属などを経て、4年前の2020年に立憲民主党に参加しました。
おととしには、亡くなった安倍元総理大臣の追悼演説を行い「再びこの議場で、あなたと魂と魂をぶつけ合う真剣勝負を戦いたかった。勝ちっ放しはないでしょう」と呼びかけ、与野党からは名演説だったと称賛が相次ぎました。
今回の代表選挙では、当初は「『昔の名前で出てます』ではいけない」などとして立候補に慎重な姿勢を示していましたが、ベテランの小沢一郎・衆議院議員からの期待に加え、中堅・若手議員などから要請が相次いだことを踏まえ、立候補を決断しました。
野田氏は、政界でも屈指の酒豪として知られるとともに、平日はほぼ毎日、選挙区内の駅前に立って声かけなどの活動を行っています。
野田氏が最も忘れられないとしているのは2期目を目指した1996年の衆議院選挙で105票の僅差で敗れたあと、一睡もしないまま駅前に立った朝で、今でもその悔しさを胸に刻んでいるということです。
座右の銘は松下政経塾を設立した故・松下幸之助氏のことばで成功まで志を貫くという意味の「素志貫徹」(そしかんてつ)です。
候補者たちは
枝野元代表は、陣営の報告会で「結果はひとえに私の力不足に尽きる。きたる衆議院選挙や参議院選挙で勝ち抜き、国民の期待に応えて目指す社会をつくっていくため一兵卒として頑張っていきたい。『客寄せパンダ』としては、まだまだ役に立つかと思うので皆さんの応援に回らせていただく」と述べました。
泉前代表は、記者団に対し「『悔しくない』と言えば嘘になる。両横綱に上手投げをされた感じだが、まだまだ自分の修行不足だ。しこを踏んでやり直す」と述べました。その上で泉氏は「野田新代表には、挙党一致で選挙態勢を万全に整え、政策なども、これまでの蓄積を生かしてほしい。おかしな政治家を退場させて新しい政治をつくることを国民が求めているので、私も全力を尽くしたい」と述べました。
吉田晴美氏は、記者団に対し「野田新代表には、立憲民主党がどういう未来や社会をつくるのかを、思いきり発信してもらい、次の衆議院選挙で、絶対に政権交代まで持って行くことを期待したい」と述べました。また、みずからが代表選挙に立候補したことについて「まったく知名度が無い、新人の当選1回で挑戦した中で、みなさんの票はありがたく、本当に、希望だ」と述べました。
立憲民主党内の反応
安住国会対策委員長は、記者団に対し「決選投票も含めて野田氏に投票した。手腕は大変よくわかっているし、野党のリーダーとしてだけではなく総理大臣としてふさわしいということを国民に問うには非常に良いリーダーだと思っている」と述べました。また、ほかの野党との連携について「バラバラに戦って、結局は自民・公明両党が利するだけというのは、そろそろ卒業しなければならない」と述べました。
辻元代表代行は「やっと、政権を取りにいくための発射台に立てた。野田新代表は総理大臣経験者なので、自民党の総裁選挙で誰が勝っても、がっぷり四つで戦える。野田氏を先頭に、衆議院選挙で勝ち抜きたい」と述べました。その上で「飛行機でも鳥でも、高く飛ぶためには、右と左の翼でしっかりとバランスをとらなければならない。立憲民主党には多様な人がいるので、バランスをとって飛躍してほしい」と述べました。
小川前政務調査会長は、記者団に対し「衆議院選挙を間近に控えるなか、元総理大臣がみずから陣頭指揮に立つ重みをみんなで受け止めて支えていきたい。政治腐敗を改め、社会の停滞を打破していく責任を果たしてこその野党第一党であり、国民の期待や願いにしっかり応えていく」と述べました。
江田 元代表代行は記者団に対し「早速、解散・総選挙となるだろうから一丸となって戦い抜いて政権交代を果たす。私でできることであれば、何でも、その通りやりたい」と述べました。また今回の代表選挙について「吉田晴美氏が出たことで、フレッシュな視点から有意義な論戦ができた。ジェンダー平等や多様性を訴えている政党の代表選挙に女性が1人もいないという事態は避けられた」と述べました。
各党のコメント
自民党の梶山幹事長代行は「野田氏の新代表就任を心よりお祝い申し上げる。現在、自民党も総裁選挙を実施しており、今月27日に選出される新総裁とともに日本を取り巻くさまざまな重要課題に対し、与野党間で活発な政策論議が行われることを期待している」というコメントを発表しました。
日本維新の会の馬場代表はコメントを発表し「野党第一党を目指すわれわれとしては、野田新代表ともしっかり議論を重ね、政治改革をはじめとする諸改革を、競い合って進めていきたい。代表選挙で各候補者から出ていた、政策活動費や企業・団体献金の廃止などの主張は、ルールが国会で制定される前に、立憲民主党内で自主的に順守することを提案したい」としています。その上で「『自民・公明両党の過半数割れ』という目標は共有するが、まずは、きたる総選挙に、互いに全力でぶつかっていく」としています。
公明党の山口代表は「野田氏に祝意を表したい。野田氏は解散総選挙が近いと強調し政権を取る意志を示しているが、自民・公明両党は新たな総裁・代表のもとで結束して政権を維持し堂々と勝負していきたい」というコメントを出しました。
【リンク】特設サイト 立憲民主党代表選挙
臨時党大会での動き
決選投票前の演説
野田元総理大臣は「教育無償化のみならず、医療・介護・障害者福祉などのベーシックサービスを所得制限なくすべて国が供給していく体制を作り、『弱い人を助けるための政治』はもう終わりにし『弱い人が生まれない社会』をつくる。そして何よりも大事なのは、国民の政治に対する信頼だ。金権政治を終わらせ、世襲政治を制限する。政権交代こそが最大の政治改革であり、その先頭に立つことを誓う」と訴えました。
枝野前代表は「私たちは今、歴史の分かれ道にいる。表紙を変えるだけで奪われた30年を延命させるのか、裏金問題にふたをして政治不信をさらに募らせ民主主義そのものの基盤を失っていくのか。そんなあしたを絶対に許してはならない。人間を使い捨てにする社会に終止符を打ち『人間中心の経済』を打ち立てたい。立憲民主党が誰よりもまっすぐに国民の声とつながり、政治の転換を本格的に実現しよう」と訴えました。
1回目の投票前の演説
野田元総理大臣は「朝顔は、早朝にかれんな花を咲かせるが、日が当たる前の夜の闇と、夜の冷たさこそが一番大事だ。立憲民主党は、強い自民党・公明党と戦って、勝ち続けている人はほとんどいない。われわれは、夜の闇と夜の冷たさを知っているから、ほのかな明かりとぬくもりがありがたいと思っている。勝ちっぱなしの自民党にはわからないことを、政策体系で作ってきた。格差を是正し、分厚い中間層を復活するために政権交代を実現しよう」と訴えました。
枝野前代表は「政治不信はひと事ではなく私たちにも大きな責任があり、永田町の内側を向いた合従連衡ではなく国民ひとりひとりとつながることで政治を変える力が生み出される。大都市から農山、漁村に至るまで暮らしの声に寄り添った私たちのビジョンと政策を自信を持って力強く訴えよう。政権を担える国民政党へ立憲民主党をさらに前進させて暮らしと経済の危機を乗り越え、国民に寄り添いながら時代の先頭に立って前へと進んでいく」と訴えました。
泉代表は「私は今回『日本を伸ばす』という政策を掲げていて、農業、観光業、地域の再生可能エネルギーを大切にして地域経済を盛り立てていく。私たち立憲民主党が前向きな政策を持っているということを皆さんに伝えたい。私は厳しい3年間、党を再生させてきたが、まだまだここからだ。党を割らず、仲間を大切にし、責任を持ってこの党を率いると誓う。ぜひ一緒になって立憲民主党の旗を掲げ続け、政権を担っていこう」と訴えました。
吉田晴美氏は「今回私が訴えたのは教育、経済、そして国民生活の底上げだ。『年金だけでは苦しい』『収入が増えない』という国民の声に寄り添おう。国民が求めるのは物価高対策としての食料品の消費税ゼロ税率だ。衆議院の解散・総選挙が目前に迫っていて自民党との明確な対比軸を示そう。大企業や富裕層を優遇する自民党に対し、私たちは中小企業、生活者、そして働く人の政策をはっきりと掲げて戦う。一緒に元気な日本をつくっていこう」と訴えました。
臨時党大会までの動き
野田元首相「勝つためにベストを尽くす」
野田元総理大臣は記者団に対し「勝ち抜くためにベストを尽くす」と述べました。その上で「このあとどのような演説で支持を訴えるのか」という質問に対し「わかりません。プレッシャーを与えないでください」と述べました。
野田氏の陣営は、23日午後、東京都内のホテルで決起集会を開き、国会議員や国政選挙の公認候補予定者、それに地方議員などおよそ60人が出席しました。この中で野田氏は「皆さんの懸命の支えがあったからこそ戦い続けることができたが、勝たなければ意味がない。自民党に勝ち抜くために、私は立ち上がった。気合いを込めて演説をするので支援をお願いしたい」と述べました。
枝野前代表「私なりの思いを伝えたい」
枝野前代表は記者団に対し「立候補するかどうか正直迷いもあったが、本当にいい戦いができた。残された演説では、投票先を迷っている1人でも多くの人に投票してもらえるよう私たちの党が今、何をしなければならないのか、私なりの思いを伝えたい」と述べました。
枝野氏の陣営は、23日午後、東京都内のホテルで決起集会を開き、国会議員や地方議員などおよそ30人が出席しました。この中で枝野氏は「この代表選挙は、日本の政治を変え、まっとうな政治で民主主義を取り戻すスタートだ。今、困っていて不安の中にある国民生活を守るため、一緒に戦ってくれた皆さんの思いをしっかりと受け止めながらこのあとの臨時党大会に臨み、最後の最後まで頑張りたい」と述べました。
泉代表「次の政権を担う立憲民主党の姿を見せられた」
泉代表は記者団に対し「選挙戦を通じて次の政権を担う立憲民主党の姿を見せられたのではないか。私は特に地方の皆さんと歩んできたので国政選挙の公認候補予定者や都道府県連からの票に期待したい。最後の演説は全力で訴えたい」と述べました。
泉氏の陣営は、23日午前、東京都内のホテルで決起集会を開き、国会議員や国政選挙の公認候補予定者、それに地方議員などおよそ40人が出席しました。この中で泉氏は「立憲民主党はもっともっとよくなるし、よくなって政権を担わなければならない。私が進めてきた路線を信じてくれた皆さんに必ず勝利を届け、皆さんの力を最大限に引き出す党運営をして政権を確保したい。最後の最後まで一緒に頑張っていこう、必ず勝ちます」と述べました。
吉田氏「若い世代や女性 応援の声 高まり感じる」
吉田晴美氏は記者団に対し「無名からのスタートだったが、若い世代や女性を中心に応援の声が高まっていることを感じる。きょうの演説では、自民党との対比軸を明確に打ち出し、徹底的に『生活者目線』で政治を語っていきたい」と述べました。
吉田氏の陣営は、23日午前、東京都内のホテルで決起集会を開き、国会議員や地方議員などおよそ30人が出席しました。この中で吉田氏は「代表選挙では普通の感覚で訴えることで政治の常識や永田町の常識にとらわれない新しい時代の政治文化をつくっていきたいという思いで戦ってきた。どのような結果が出るかわからないが、このあとの演説でも国民の声を訴えたい」と述べました。
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