原発・エネルギー 「小石河」の転向は本物か 電力需要増大で原発容認、いぶかしむ声も(2024年9月18日『産経新聞』)

自民党総裁選 政策比較(4)

岸田文雄首相は東日本大震災以降、原発への依存度を可能な限り低減する政府の方針を大きく転換した。温暖化対策が急務となる中、太陽光など再生可能エネルギーの拡大とともに脱炭素電源として「原子力の最大限活用」を打ち出し、原発の再稼働やリプレース(建て替え)、次世代型原発の開発・建設の推進などを掲げた。

「電力供給を最大限行うためにあらゆる技術に張っておかないといけない。リプレースも選択肢としてある」。河野氏は8月26日の出馬表明会見で語った。3年前の前回総裁選では「いずれ原子力はなくなる」などと主張していた。小泉氏も出馬会見で「原子力を含めあらゆる電源を考えていく」と述べ、いずれも軌道修正した形だ。

背景には、AI(人工知能)の普及やデータセンターの建設加速で、電力需要の増大が避けられない見通しになったことがある。脱炭素とエネルギーの安定供給を両立させるには、発電量が天候に左右される再エネの拡大だけでは難しい。首相が先導した原発回帰が現実路線として無視できなくなっている。

一方、石破氏は出馬会見で「原発をゼロに近づける努力を最大限する」と他候補と一線を画す姿勢を表明したが、今月14日の討論会では「安全性を最大限に高め、引き出せる可能性は最大限に引き出すのは当然だ」とトーンダウンしている。

今秋には中長期的なエネルギー政策を示す「エネルギー基本計画」の改定に向けた詰めの議論が始まる。2035(令和17)年度以降の電源構成の目標に焦点が当たりがちだが、使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」の問題など焦点は多岐にわたる。総裁選の討論などでは掘り下げた議論が行われておらず、「方針転換した3人の考えをもっと聞きたい」といった声が党内からも上がる。

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