自民党総裁選(27日投開票)の余波が外交に及んでいる。
岸田首相は「最後の一日まで政策実行に一意専心で当たる」と意気込んでおり、今月下旬に任期中最後の外国訪問として米国を訪れる予定。21日にバイデン大統領の地元、東部デラウェア州ウィルミントンで日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」首脳会議に出席。その後、国連本部のあるニューヨークへ回る。
各国首脳らによる一般討論演説には首相が臨むのが通例だ。だが、日本に割り当てられた登壇枠は、スタート3日目の現地時間26日午後。総裁選の投開票へ間に合うように帰国できないため、2007年以来となる首相演説の見送りを決めた。ニューヨークでは、紛争や気候変動をテーマとする「未来サミット」出席などにとどまる。
一般討論演説の代役候補はまず外相となるが、今回、上川陽子外相自身が総裁選に出馬している。同氏は13日の記者会見で、20カ国・地域(G20)外相会合をはじめ国連総会に合わせた会議などに出席するかどうか「現時点で決定していない」と述べたが、欠席する見通し。一般討論演説は山崎和之国連大使が代わりを務める案が有力だ。
政府・与党は新首相を選出する臨時国会について10月1日召集で調整中。同日中に首相指名選挙を行う想定のため、就任早々に外交デビューを果たす機会となり得る。外務省サイドには「日本の存在感が高まる」との期待がある。
ただ、自民党は早期の衆院解散・総選挙を視野に入れており、最も早いパターンとして「10月15日公示、同27日投開票」の日程が取り沙汰される。この場合に解散日になると見込まれる9日は、ちょうどASEAN関連の会議と重なる。
日本の首相が不在となれば初の事態。外務省幹部は「新政権の決断を待つしかない」と固唾をのんで見守っている。