身寄りがないなどで引き取り手のない遺体を自治体が火葬し、遺骨を保管するケースが増えるなか、東北大学などの研究グループが調査した結果、およそ7割の自治体が保管期間を決めていないと回答したことが分かりました。遺骨を永久に保管するという自治体がある一方で、灰にして処分するという自治体もあり、専門家は「トラブルを避けるためにも国が地域の実情にあった方針を示すのが望ましい」と指摘しています。

亡くなったあと、遺体を引き取って火葬する親族がいない人については、死亡した場所の自治体が火葬すると法律で定められていますが、遺骨の取り扱いについては自治体が個別に対応しているのが実情です。

国立歴史民俗博物館東北大学などの研究グループは火葬後の遺骨の保管状況について全国1741すべての市区町村を対象に調査を行い、半数を超える918の自治体から回答がありました。

 

それによりますと、保管する期間についておよそ7割、696の自治体が「決まっていない」と回答し、期間を「決めている」とした197の自治体では、▽「1年以内」が56
▽「1年から5年以内」が88
▽「5年から10年以内」が32
▽「それ以上」が18で、
中には永久に保管すると回答した自治体もあり、大きく幅があることが分かりました。

一方、自由記述で「灰になるまで火葬する」などと回答し、保管せず処分しているとみられる自治体も13ありました。

また、保管期間が経過したあとの遺骨については「身寄りのない人のための納骨堂や墓に安置する」がおよそ7割にのぼった一方で「葬祭業者に一任している」と回答した自治体もあり、遺骨の行方を把握していないケースもあったということです。

調査にあたった専門家「国が地域の実情にあった方針を」

 

調査にあたった東北大学大学院の問芝志保准教授は「自治体によって遺骨の取り扱いが違うことでトラブルにつながるおそれがある。どう遺骨を扱えばよいかの社会的な合意を得られるよう国が地域の実情にあった方針を示すのが望ましい」と指摘しています。

保管期間ギリギリで親族の遺骨引き取れた親族は

 

今回の調査では、およそ7割の自治体が遺骨の保管期間を「決まっていない」と回答しましたが、親族調査が十分に行われないケースでは、トラブルにつながりかねないおそれもあります。

関西地方に住む60代の女性は、去年11月、離れて暮らしていた80代の叔母が亡くなっていたことを、別の親族が死亡した際に取り寄せた戸籍を見て初めて知りました。叔母は去年8月、大阪府内の病院で亡くなり、その後、病院があった自治体が火葬して遺骨を公営の斎場で保管していました。

叔母が亡くなった際に、親族に連絡がなかった理由を女性が自治体に尋ねたところ、担当者は「電話番号案内サービスを使って親族を捜したが見つからず、火葬した」と回答したということです。

この自治体では、遺骨の保管期間を1年間としていたため、火葬から11か月が経過したことし7月、女性は叔母の遺骨を引き取ることができました。

女性は「ギリギリのタイミングで引き取ることができて安心しましたが、なぜもっと調査を尽くしてくれなかったのか納得できません。大切な人の遺骨が戻らず、やりきれない思いをする人が出てこないよう、きちんとしたルールで保管してほしいです」と話していました。

保管期間や方法を見直す自治体も

 

1人暮らしの人の増加や家族のつながりの希薄化を背景に、自治体が引き取り手のない遺骨を保管するケースが増える中、保管の期間や方法を見直す動きも出ています。

仙台市では、引き取りを希望する親族があとで現れても対応できるよう、市営墓地の一角にある身寄りのない人のための納骨堂で遺骨を保管しています。

しかし年々、数が増えて、一時は床に山積みせざるをえない状況になったため、4、5年前から、保管の期間を5年から1年に短縮し、骨つぼのサイズを一回り小さいものに変更しました。

ただ、2023年度は、新たに201の遺骨が集まったうえ、その後も増え続けていて、親族を捜すなどの職員の事務作業や、費用の負担も大きくなっているということです。

仙台市保護自立支援課の石川邦雄課長は「いまは保管スペースに余裕はあるが、今後さらに増えていけば、再び保管の課題が出てくる。トラブルを回避するためにも、国には遺骨の取り扱いのルール整備を行ってほしい」と話していました。