◇
和歌山・田辺市にある草木が生い茂った一軒家。この家のあるじが亡くなったのは6年前のことでした。自伝によると交際した女性は4000人。貢いだのは30億円。スペインの伝説上のプレーボーイになぞらえ、「紀州のドン・ファン」と自ら称していた野崎幸助さん。生前「最後の女性」と語っていたのが…
記者(2018年)
「(事件から)約1か月たつが何か思われることは」
「奥さまきょうはなんで戻ってこられたんですか」
須藤早貴被告(当時22)
「…」
須藤早貴被告。2人の年の差は当時55歳。結婚してわずか3か月後に野崎さんに多量の覚醒剤を摂取させ、殺害した罪などに問われていますが、須藤被告の犯行を裏付ける直接的な証拠はこれまで見つかっていません。
事件の真相は…
日テレNEWS NNN
記者
「須藤被告を乗せたとみられる車が和歌山地裁に入りました」
12日から始まった裁判。黒のワンピースにマスク姿で法廷に現れた須藤被告。その冒頭、はっきりとした声で…
須藤被告
「私は社長(野崎さん)を殺していませんし、覚醒剤を飲ませたこともありません」
起訴内容を全面的に否認、無罪を主張しました。
日テレNEWS NNN
直接的な証拠がない中、検察側が積み上げてきたのが状況証拠です。
1つは須藤被告の検索履歴。事件の4か月前には「遺産目当てと呼ばれた女5選」という動画を検索し閲覧。事件の2か月前には「老人 完全犯罪」「衝撃 驚くべき完全犯罪」など「完全犯罪」という言葉を何度も検索。
事件直後には、「ばれずに殺せば正義」「遺産相続 どれくらいかかる」「東京都内の億超えマンション」などと検索していたといいます。
状況証拠2つ目は、事件当日の状況です。この日、自宅にいたことが確認されているのは野崎さん、須藤被告、そして家政婦の3人です。
死亡推定時刻などから算出すると、野崎さんが覚醒剤を飲んだ時間帯、家政婦は外出していて、家にいたのは野崎さんと須藤被告の2人だけだといいます。
検察側は、須藤被告が覚醒剤を摂取させる十分な機会があったと主張しています。
法廷では事件当日、須藤被告が119番通報した時の音声も流されました。
救急(事件当時の通報音声)
「どうされたんですか?」
須藤被告(事件当時の通報音声)
「上がったら動かなくなって」
救急(事件当時の通報音声)
「呼吸止まる瞬間は誰か見ていますか?」
須藤被告(事件当時の通報音声)
「見ていないです」
救急(事件当時の通報音声)
「心肺蘇生を行います、やり方わかりますか?」
須藤被告(事件当時の通報音声)
「わからないです」
音声では、家政婦が慌てるような様子も。須藤被告は前かがみになり、食い入るように耳を傾けていました。
日テレNEWS NNN
状況証拠3つ目は動機です。須藤被告は友人や家族に対し「自然死で遺産を得る予定だった」などと伝えたり、事件後、野崎さんの会社の役員に就任し、自分の口座に会社のカネを送金させたりしていたことから、遺産を手に入れる動機があったと主張しています。
しかし“野崎さんにどうやって覚醒剤を飲ませたのか”ということについては12日、言及はありませんでした。
様々な状況証拠を積み上げ、須藤被告の犯行を主張した検察側。今回の裁判では28人の証人を申請しているといいます。
日テレNEWS NNN
一方、弁護側は…
弁護側
「本当に須藤被告がやったのか。本当に誰かが覚醒剤を飲ませたのか」
そもそも“本当に事件なのか”と主張。疑わしきは罰せず、“立証が尽くされているのかを判断してほしい”と裁判員らに呼びかけました。
今後、24回にわたる審理が予定されている裁判。判決は12月に言い渡される予定です。