国民健康保険証も12月に廃止へ…河野デジタル相の横暴「官僚を怒鳴り、メディアを無視」。裏金問題の説明問う聴衆には「役に立たない」(2024年8月22日『みんかぶマガジン』) 

 岸田文雄首相は14日、来月予定される自民党の総裁選に再選出馬しない意向を明らかにした。岸田氏を巡っては、政治資金問題などで辞任を求める声が高まっていた。早くも次の総裁には石破茂氏、小泉進次郎氏、高市早苗氏などの名前が上がっているが、経済誌プレジデントの元編集長で、作家の小倉健一氏が解説するーー。
つまり、麻生氏は、次期総裁選で、河野氏を支持・支援するようだ
 自民党総裁選に向けて、気になる動きが出てきた。FNNプライムオンライン(8月16日)の『麻生副総裁が茂木幹事長に「支持は難しい」との意向伝える…自民党総裁選に向け動き激化 麻生派の動向が焦点に』というニュースで、麻生氏が茂木氏を支持しないと伝えている。その中で、麻生氏の今後の動きについて以下のように報じている。
<麻生氏は、岸田首相が不出馬を表明した14日夜、総裁選への立候補に意欲を示す茂木氏と会談しましたが、その際、「麻生派として支持するのは難しい」と伝えていたことがわかりました。/麻生氏は、麻生派に所属する河野デジタル相が出馬した場合、「河野氏を支持するのが筋」だとの考えで、派内の意見も聞いた上で今後調整を進める方針です>
 つまり、麻生氏は、次期総裁選で、河野氏を支持・支援するようだ。河野氏といえば、自民党の裏金問題の幕引きを図るために設立された「政治刷新本部」とは、所属する麻生派存続のために、完全に距離を置いていた。前回の総裁選で河野氏を支えた菅義偉前首相や小泉進次郎環境大臣自民党の信頼回復のために必死で党改革を先導したが、河野氏はどこ吹く風、菅氏、菅氏周辺とは袂を分かったようだ。
官僚を怒鳴り、メディアを無視し、すぐに裏切る
 菅氏と麻生氏といえば、犬猿の仲で知られていることから、菅氏から麻生氏へと頼る相手を乗り換えたということになる。頼る相手を平気で乗り換えられるところに、河野氏人間性が表れているようにも思う。気にくわないことがあると、自分より弱い立場の官僚を怒鳴り散らす。メディアから都合の悪い質問をされるとはぐらかす。ひどいものだと思う。
 しかし、政策を実現するために、非道に徹するのだと言われれば、その通りかもしれない。いい人が政治をやることこそ、政治は方向性を失い、訳の分からない方向へ進むことになる。
三国志で裏切りを続けた呂布のような河野氏の悪徳
 岸田文雄首相がいい例ではないか。きっとこの人、いい人なのだろう。しかし、あれだけ約束していた憲法改正も結局やらずじまい、新しい資本主義とやらは雲散霧消した。政治活動では「消費税の増税の成功体験を実感させる」などと、増税に前のめりになっていたのに、自身の出馬した総裁選期間では「増税はしない」と言い張り、結局、子育て支援金などを含む増税をしてしまった。
 いい人に政治をやらせると、こういうことになるのだと改めて思い知ったばかりなので、三国志で裏切りを続けた呂布のような河野氏の悪徳にも少しは目を瞑らないといけないのかもしれない……と言ってみたものの、河野氏は政策の大転換をしたばかりだ。
 河野氏は、脱原発論者として知られている。太陽光など再生可能エネルギーを重視し原発ゼロをめざすとして、官僚を怒鳴り散らしてきた。
河野氏は長年、自民党議員でありながら原子力政策の問題点を指摘し続け、推進派に対する批判もいとわなかった。例えば04年、「核燃料サイクル」政策を巡って電気事業連合会が再処理工場の稼働から廃止までの72年で約19兆円が必要だと試算したことに対し、自民党の部会で再処理の中止に言及するなど政府の原子力政策を痛烈に批判。福島原発事故後の12年には、共産党社民党議員も交えた脱原発超党派議員連盟原発ゼロの会(現在の原発ゼロ・再エネ100の会)」を発足させ、共同代表として活動してきた>(毎日、2023年9月5日)
完全に政策を180度転換した河野氏
 そんな河野氏だが、総理大臣の芽が出たからなのか、麻生氏が総裁選支援の条件として出してきたからなのだろうか、完全に政策を180度転換してしまった。
<デジタル相の河野太郎は7月31日、茨城県東海村原子力発電関連施設にいた。視察後、記者団に「電力需要の急増に対応するために原発の再稼働を含め、様々な技術を活用する必要がある」と語り、こだわってきた「脱原発」の方針を事実上軌道修正した>
<「私はこの派閥を出るつもりはありません」。6月26日夜、都内の日本料理店。河野は麻生に「派の仲間と一緒にこれからも仕事をしていきたい」と話した。自らのエネルギー政策の修正もこのとき伝えている>(日経、8月14日)
演説の聴衆に「こういうやからを許してはならない」
 国民をナメるのも大概にせい、と言いたくなる。あれだけ、デタラメな論法で脱原発を主張し続けた挙句に、派閥の支援が得られるからと、大した説明もなく、そそくさと原発賛成なのだという。
 河野氏は、東京都足立区で行った都議補欠選挙の応援演説(7月2日)で、裏金説明しろと叫ぶ聴衆に、以下のような演説をぶち上げた。
<こういうやからを許してはならない。人がしゃべっているときに大きな声を上げる。選挙にも、国の未来を作ることにも何の役にも立たない>
 たしかに、演説を妨害するのはよくないことだが、自民党の政治改革から、麻生氏の歓心を買うためにひたすら距離を置いてきたのは河野氏なのである。裏金問題について、きちんと自分の口から説明し、なぜ政治改革に後ろ向きなのかをしっかりと教えてほしいものだ。私は原発再稼働に賛成の立場だが、福島で不幸な事故も起きた経緯もあり、原発反対という立場も心情的な理解はしている。
 しかし、河野氏脱原発から原発推進への方針転換は、賛成派からも反対派からも許してはならないのではないのだろうか。電力需給が急増していようとなんであろうと、原発の危険性には変化がない。全く説明になっていない。<こういうやからを許してはいけない><選挙にも、国の未来を作ることにも何の役にも立たない>とうのは河野氏のような人に対して用いるべき言葉であろう。
12月に現行の健康保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化される
 河野氏が総裁選に負ければ、放っぽりだすのが確定的なのが、マイナンバーカードだ。12月に現行の健康保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化される。6月の利用率はわずか9.9%と普及は進んでいない。保険証である以上、持ち歩くことになるが、大事な個人情報の多くが詰まっているカードを持ち歩くのは気が滅入る人も多いのではないだろうか。
 iPhoneの中にもマイナンバーカードの機能が搭載される。便利であることから、多くの人が使うことになるだろう。しかし、安全面で問題はないのだろうか。
 iPhoneユーザーの多くは顔認証(Face ID)を利用しているが、実際には、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がシステムに侵入し、本人の写真を生成AIツールやSMS認証と組み合わせて、顔認証を簡単に突破する手口が存在している。このような現実がある中で、デジタル分野のイノベーションは確かに必要だが、公的な証明書の運用には慎重な検討が求められるだろう。そんなこと、河野氏は完全にお構いなしだが…。
人間的にも信用できず、政策的にも何を信じていいかわからない。仕事は雑
 いくらアップル社や政府、デジタル庁がセキュリティに注意を払っても、最終的には携帯キャリアショップのスタッフやユーザー自身がセキュリティの弱点になってしまうものだ。
さらに、セキュリティに対する意識やITリテラシーには個人差がある。例えば、私は絶対にしないが、多くの人がSNSに自分の生年月日を公開したり、年齢確認のために身分証明書の画像をスマホに保存したりしている。
 これらの行為は、犯罪者にとって攻撃の隙を与えることになる。したがって、公的な証明書やセキュリティの普及については、デジタルやセキュリティに対する理解が低い人々を基準にして、普及と教育を同時に進める必要がある。しかし、河野氏にはその配慮はない。
 人間的にも信用できず、政策的にも何を信じていいかわからない。仕事は雑。部下には怒鳴る。都合の悪いことには答えない。こんな人物が次の日本の首相になるのかと思うと、不安で仕方がない。
小倉健一