岸田首相は、製造時に出るCO2を減らした「グリーン製品」を増やしていくため、年内をめどに新たな制度を設計するよう経済産業省などに指示した。
2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするのが政府目標だ。その険しい道の一つがグリーン製品だと言える。
国内でCO2排出量の34%は、製造業や建設業など産業部門が占めており、そのうち鉄鋼業が38%、化学工業が16%と5割強に上る。製造業でグリーン製品の供給網を発展させていかなければ、目標の実現はおぼつかない。
グリーン製品には、CO2の排出が少ない電炉で作った鉄鋼製品や、石油ではなく植物を原料にした樹脂などがある。いずれも割高なため、民間任せのままでは普及が進まないことが課題だ。
政府が率先して脱炭素に資する製品を購入すれば、民間需要の呼び水となることが期待できる。企業側に対し、生産を増やすための設備投資を促す意義も大きい。
脱炭素に貢献する供給網づくりは、世界的な潮流だ。
グリーン製品の購入拡大に取り組む国際的な枠組みは21年に発足し、現在、米アップルや欧州のエアバス社など、国際的な約100社・団体が参加している。
欧州連合(EU)も、域内でグリーン製品を核とする脱炭素の供給網づくりを進めている。
日本でも脱炭素の供給網を構築すれば、海外への販路を広げていくことが期待できよう。
国内でCO2の排出を減らした製品を後押ししていくためには、大口需要家である自動車メーカーなどに電炉で作った鉄鋼製品などを一定量、調達するよう義務づけることなどが検討課題になる。
ただし、現状では、グリーン製品の生産量は限られ、急な増産は難しい。製品の国際競争力にも配慮しながら、時間をかけて段階的に拡大していく必要がある。
政府は、どう進めるのか工程表を示すべきだ。また、この手法でCO2の排出量をどれだけ減らせるのかも明示してもらいたい。