小学6年生の時、自分の生活が友達と…(2024年8月20日『毎日新聞』-「余録」)

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仮放免の子どもたちによる絵画作文展で、作品を講評する直木賞作家の中島京子さん=東京都練馬区で2024年8月2日午後2時35分、北村和巳撮影
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仮放免の子どもたちによる絵画作文展で展示された作品=東京都練馬区で2024年8月2日午後2時35分、北村和巳撮影
 小学6年生の時、自分の生活が友達と違うことに気づいた。アフリカにルーツのある女子中学生は、そう作文につづった。今月初めに東京都内で開かれた絵画作文展で紹介された
▲「学校のみんなは、風邪を引いたら、すぐに病院に行くことができるけれど、私たちが風邪を引いたら簡単に病院に行くことができない」「親の仕事をみんなに紹介しなければならないけど私の家は、働けない」
▲彼女は「仮放免」の立場にある。日本での在留資格がなく、入管施設への収容を仮に解かれている状態だ。健康保険に加入できず、働くことは禁じられている。県境を越えた移動には入管の許可が必要になる
▲国外退去処分を受けている18歳未満の外国人は、2022年末時点で295人。日本で生まれたり、幼い頃に来日したりしており、「母国」に戻っても生活は難しい。在留資格のない外国人の送還徹底を前に昨年、特例措置として、子どもたちの在留を特別に許可する方針が示された。しかし、日本生まれでない子や未就学児、親が不法入国している場合などは対象外となった
▲「仮放免の子どもたちによる絵画作文展」は「厳しい境遇を知ってほしい」と始まり、今年で4回目だ。主催者の駒井知会弁護士は、全ての子が救済され、今回が最後になることを望んでいる
▲女子中学生は作文を「友達みたいに自由が欲しい。夢が現実になるのを願っています」と結んだ。思いに応え、未来ある子どもたちの権利を守るのが、国の責務ではないか。