梅毒の患者数が高止まりしている。2022年と23年に年間1万人を超えた。今年も上半期だけで約6700人に上っている。
これまで約50年ごとに流行が起きており、1967年にも1万人を超えていた。今世紀に入ってからは年間数百人で推移していたが、13年ごろから拡大した。
厚生労働省などが作製した先天梅毒への注意を呼び掛けるポスター
主に性行為で感染し、キスでうつることもある。かつては性風俗産業が主要な感染経路とみられていたが、それだけではない。この1年、診察した医療機関の聞き取りに、風俗店利用や従事の経験があると答えた患者は男女とも半数以下だった。
長崎大などが男女5000人を調査したところ、3カ月以内に性交渉を持っていた人のうち、最も多かったのは相手が1人だけというケースだった。一方で、極端に人数が多い人もいた。こうした環境下では、一般の人が思うよりも感染リスクが高くなる。
医療が進んだ現代では致死的な病気ではなく、抗生剤を服用すれば完治する。ただ、しこりや発疹など症状が多様なため、他の病気との判別が難しく、「偽装の達人」とも呼ばれる。人ごとだと思わず、早めに受診することが肝要だ。
とりわけ注意が必要なのは妊婦だ。感染すると流産や死産のリスクが高まるほか、おなかの赤ちゃんが胎盤を通して梅毒にかかる場合もある。妊婦健診で判明してから治療しても、母子感染は完全には防げない。
先天梅毒と診断された新生児には難聴や失明、知的障害などの影響が出る恐れがある。昨年は過去最多となる37人の報告があった。
予防にはコンドームの使用が有効だ。将来の妊娠に向け健康管理に取り組む「プレコンセプションケア」が広がれば、正しい知識を持つ人が増え、一定の予防効果が期待できる。無料相談などの支援をしている自治体や企業もある。
感染が心配な人や、子どもを希望するカップルには、検査が推奨されている。保健所で無料・匿名で受けられる。東京都は女性専用の検査日も設けた。