終戦の日を前に、空襲の経験を絵に描いて伝えている戦争体験者が都内で講演し、平和の大切さや戦争の記憶を伝える必要性を訴えました。

東京 墨田区のすみだ郷土文化資料館では、79年前の東京大空襲を経験した人たちが、みずから描いた「空襲体験画」をおよそ300点所蔵していて、終戦の日を前に、2人の体験者が講演しました。

このうち、9歳の時に空襲を経験した豊田照夫さん(89)は、絵を見せながら、強い風が吹いて火の粉が舞う中、窓から炎が噴き出る建物のそばを通って母親と命からがら避難した様子を振り返りました。

豊田さんは「世界で悲惨なニュースが続いていますが、当時の私と同じような経験をさせないように、争いのない世界になってほしい」と訴えました。

また、6歳の時に空襲を経験した西尾静子さん(85)は、当時見た多くの遺体が、今も心の傷として残っていることなどを証言しました。

そして、空襲のあとに再会した父親から、みかんを受け取る様子を描いた絵を見せながら「父は戦後すぐに亡くなりましたが、家族が暮らしていけるように手を尽くしてくれていた愛情深い人で、その記憶を絵として残すことができてよかったです」と話していました。

講演を聞いた高校3年の女子生徒は「証言だけでなく、目で見ることで体験者の証言が、より深く印象に残りました。私たちの世代が戦争の記憶をどうつないでいけるか考えたいと思います」と話していました。