福島県警の元警察官、未払い賃金求め提訴「パワハラで残業強いられた」(2024年8月18日『河北新報』)

 上司のパワーハラスメントで残業を強いられた上、時間外手当が実態より少なかったとして、福島県警の元警察官が県に未払い賃金を求める訴訟を福島地裁に提起し、争っている。理不尽な指導で現場がしわ寄せを受けるような事態を防ぐのが目的といい「裁判を機に警察官が働きやすい環境になってほしい」と願う。

「警察の組織を変えるきっかけにしてほしい」と提訴の理由を語る元警察官

幹部の裁量で決められた時間外手当

 原告は福島県在住の30代男性。2011年に県警に採用され、警察署の交通係や白バイ隊員など主に交通部門を担当した。

 訴えなどによると、パワハラがあったのは中通り地方の署に勤務していた22年度。地域交通部門を統括する警視が、男性を含む部下の決裁書類に細かい要求をするようになった。

 中身をほとんど見ずに「書き方がなっていない」と突き返したり、修正部分だけの訂正を認めずに書類全ての作り直しを求めたり。指摘は定時後がほとんどで係員の残業が常態化した。

 休日出勤して丸一日かかった書類の完成後に「これじゃ、署長に見せられない。俺が怒られる」と言い出したことも。男性は「不要な業務などで前年の5倍以上の残業が続いた」と言う。地検に送致できず、未処理となった事案が22年度は大幅に増えたという。

 男性は同年秋、パワハラを理由に警視の懲戒処分を求め、県人事委員会に通報。対応した県警監察課に一連の行為を訴えたが、処分はなかった。組織への失望が募り、11月に退職した。

 退職時、警視と面談した際に時間外手当の問題が判明した。勤務実績簿に記された残業時間より少ないことを尋ねると、警視は「残業は『生活給』だ。俺の判断で平均をつけている」と答えた。時間外手当の額が幹部の裁量で決められていたことに戸惑った。

 退職後、警視のパワハラの認定を求める提訴を検討したが、証拠が十分ではないと断念。約136万円の未払い賃金の支払いを求めて5月に提訴した。

 訴訟は7月2日に第1回口頭弁論があり、県側は請求棄却を求めた。県警監察課は河北新報の取材に「パワハラの有無を含め、コメントは差し控える」と話した。