「戦争の惨禍、二度と」79回目の終戦の日、310万人悼む 戦没者追悼式(2024年8月15日『毎日新聞』)

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日本武道館=東京都千代田区で、本社ヘリから
 79回目の終戦の日を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区日本武道館で開かれた。天皇、皇后両陛下や岸田文雄首相らが参列し、日中戦争第二次世界大戦で犠牲になった約310万人を悼んだ。天皇陛下は「これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」と、おことばを述べられた。
 式典では正午の時報に合わせ、参列者が1分間の黙とうをささげた。天皇陛下は戦後について「多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります」と振り返った。さらに「再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民とともに、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」と述べた。
 岸田首相は式辞で「我が国の平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたもの」と言及した。また、「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。戦後79年がたちますが、歳月がいかに流れても、この決然たる誓いを、世代を超えて継承し、貫いていく」と表明した。
 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化など国際情勢が緊迫する中、岸田首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」を進めるとし、「世界が直面するさまざまな課題の解決に全力で取り組み、国の未来を切り開いていく」と強調した。
 遺族を代表しての追悼の辞は、出征先の中国で父を亡くした福島市の安斎満さん(86)が述べる。
 式は新型コロナウイルスの感染対策のため前回まで4年連続で参列者数を制限して開催していたが、今回5年ぶりに従来並みの規模で開催した。
 厚生労働省によると、出席予定の遺族は約3600人。付き添いをのぞいて4989人が参列したコロナ禍直前の2019年よりも少なくなった。一方、高齢化のため、孫などの戦後生まれの割合は参列遺族全体の約47%で過去最多となる。【肥沼直寛】



全国戦没者追悼式に4000人、反戦の誓い新たに…参列者の最高齢は97歳で47%が戦後生まれ(2024年8月15日『読売新聞』)
 
 終戦から79年となる15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区日本武道館で開かれる。戦没者の遺族や岸田首相ら各界の代表者など約4000人の参列者が、先の大戦で犠牲となった約310万人を追悼し、反戦の誓いを新たにする。
 
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全国戦没者追悼式に臨む参列者ら(15日午前、東京都千代田区日本武道館で)=片岡航希撮影
 追悼式は正午前に始まる。岸田首相の式辞後、正午の時報に合わせて参列者全員で黙とうをささげ、天皇陛下がお言葉を述べられる。新型コロナウイルスの感染防止で2020年以降、取りやめられていた国歌斉唱が行われるなど、コロナ禍前の形で開催される。
 追悼式は例年、約5000人の遺族が参列していたが、20年以降は約50~1400人に減っていた。政府は今年、コロナ禍前の規模を目指したが、参列者は例年の7割程度にとどまる見通しとなっている。
 会場では、安倍晋三・元首相の銃撃事件や岸田首相襲撃事件を受け、手荷物検査と金属探知機による身体検査を実施する。
 参列者の最高齢は、戦没者の弟で北海道の長屋昭次さん(97)で、最年少は、戦没者の 玄孫やしゃご で東京都の酒井 清凪せな ちゃん(3)。
 厚生労働省によると、8日時点で参列予定の遺族3215人のうち、戦後生まれが占める割合は47%(1513人)となり、過去最高となった。戦没者の父母は14年連続で一人もおらず、配偶者も2人だけだった。遺族の高齢化は進む一方で、戦争を知らない世代への戦時の記憶の継承が課題となる。
 1937年の日中戦争開戦から45年の終戦までと、その後のシベリア抑留を含めた戦没者は軍人・軍属が230万人、空襲や原爆の犠牲となった一般市民は80万人に上る。
 15日はほかにも、全国各地で追悼行事が行われ、計約3万3000人が参列する見込み。