岸田総理大臣は記者会見で来月の自民党総裁選挙に立候補しない意向を表明しました。海外メディアも速報で伝えたほか、与野党などからさまざまな受け止めが広がっています。
岸田首相会見 自民総裁選に不出馬表明 首相退任へ
《与野党の反応》
石破元幹事長 自民総裁選 推薦人確保できれば立候補の意向
自民党総裁選挙への対応について石破元幹事長は、訪問先の台湾で記者団に対し「立候補に必要な推薦人20人に推してもらえる状況が整えば責任を果たしたい」と述べ、推薦人を確保できれば立候補する意向を示しました。
自民 茂木幹事長「極めて残念 重く受け止めたい」
自民党の茂木幹事長はコメントを発表し「岸田政権はわが国が内外の困難な課題に直面する中、内政、外交両面で確かな実績を残してきた。政治資金や物価高の問題などで厳しい状況に置かれていたことは事実だが、岸田総理大臣が総裁選挙への不出馬を表明されたことは極めて残念だ。総理大臣を退任するという大変重い決断であり、重く受け止めたい」としています。
高市経済安保相「概算要求控える大事な時期 岸田首相支える」
野田元総務会長「今なすべき『改革』進めていきたい」
自民 森山総務会長「続投がいいと思っていたので残念」
自民 亀岡総裁特別補佐「少し決断が早かった」
自民 稲田幹事長代理「信頼回復の道は途上」
塩谷元文科相「3年前は期待寄せ支持したが今は複雑な思い」
岸田派幹部 根本元厚労相「党を思う岸田総理の覚悟の決断」
小野寺元防衛相「政治改革でけじめつける判断」
岸田派の幹部、小野寺・元防衛大臣は、NHKの取材に対し「総理大臣としていろいろな状況を踏まえ、進退について考えたのだろう。公務優先であたってきた結果、このタイミングでの判断となったのだと思う。一連の問題を受けた政治改革で一定のけじめをつけるという判断なのではないか」と述べました。
岸田派の幹部を務める林官房長官と小野寺元防衛大臣が都内で会談しました。
そして、派閥は解散を決めているものの、引き続き岸田総理大臣を支えてきたメンバーで情報交換をしながら対応していくことを確認しました。
このあと小野寺氏は記者団に対し「岸田総理大臣に再選してほしいという思いが強かったが、自民党が変わる第一歩のために身を引くということなので重く受け止める」と述べました。
自民 関口参院会長「率直に驚いた」
自民幹部「『政治とカネ』の問題にけじめつけるため仕方ない」
岸田派幹部「不出馬に追い込まれた形 残念で気の毒」
自民幹部「さまざな事情を考慮した上での決断」
自民幹部「『立候補してほしい』との説得ダメだった」
自民 閣僚経験者「自民党への逆風収まらない」
自民 閣僚経験者「勝てる見込みないと考えたのだろう」
公明 山口代表 衆院解散「いつあってもおかしくない」
公明幹部「続投するのではないかと思っていた」
立民 泉代表「党が危機になると総理・総裁を変える手法」
立憲民主党の泉代表は記者会見で「驚いたが、岸田総理大臣自身がずっと考えていたことではないか。旧統一教会の問題は決着がついておらず、政治改革も事実上、ほとんど改革には至っておらず、これ以上自分の力では改革が進められないという思いがあったのではないか」と述べました。
そのうえで「自民党は生命維持のため、党が危機になると総理・総裁を変えて心機一転、過去を忘れてもらうという手法を繰り返してきた。そういう手法にいつまでも国民がひっかかってはいけない。今もなお『裏金議員』が大量に党内に存在し、資金を返還したり、納税したりする訳でもなく、放置しようとしている議員が大量にいる。岸田総理大臣は『ドリームチーム』と言っていたが、かなりその部分で国民とずれているのではないか」と述べました。
一方、来月行われる立憲民主党の代表選挙への影響について「自民党の総裁選挙とは分けて考えられるべきで、立憲民主党として、誰が総理大臣であっても自民党の体質がまったく変わっていないことと、われわれに政権担当能力が十分にあると示していく戦いになる。私自身の対応については、党内で意見交換しており、自民党に代わる政権をつくるという強い志が見えてくる代表選挙にしなければならない」と述べました。
立民 安住国対委員長「今後は政局全体が流動的になる」
立民 逢坂代表代行「政策成し遂げるより自民党政権の延命決断」
維新 藤田幹事長「党内まとめきる力なかったこと残念」
維新 音喜多政調会長「看板だけ変えても自民党変わることない」
共産 小池書記局長「国民の怒りに追い詰められた結果」
国民 玉木代表「新しい総裁が選ばれれば衆院選早まる」
国民民主党の玉木代表は、NHKの取材に対し「政治とカネの問題に組織の長としてけじめをつけたことは評価したい。また『賃上げ対策』に積極的に取り組み、一定の成果を出したことも率直に評価できる。しかし、成立した改正政治資金規正法は『ザル法』のままで、新しい総裁には第三者機関の設置など検討項目を速やかに具体化する責任がある」と述べました。
そのうえで「自民党の『裏金問題』で政治に対する信頼が著しく失われ、自民党の危機ではなく日本の危機と言っても過言ではない。日本再生のために政治の刷新が必要であり、同時に野党も変わらなければならない」と述べました。
一方、次の衆議院選挙の時期について「新しい総裁が選ばれれば早まるだろう」と述べました。
れいわ 多ケ谷国対委員長「対策がさらに遅れないか懸念」
社民 福島党首「自民党が看板すげ替え衆院選」
《海外の反応》
海外メディアも速報で伝える
岸田総理大臣が来月の自民党総裁選挙に立候補しない意向を固めたことについて、韓国の連合ニュースやロイター通信なども日本メディアの報道を引用して速報で伝えています。
このうち、韓国の連合ニュースは自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、内閣支持率が低迷していることに触れ「『退陣危機』のレベルである10%から20%台にとどまり党内外から退陣の圧力を受けてきた」と報じています。
また、ロイター通信は「支持率が低迷する中での退陣決定は世界4位の経済大国の首相の後継争いの引き金となるだろう」と報じています。
このほか、AP通信や中国の国営・中国中央テレビ、それに、フランスのAFP通信も速報で伝えています。
中国メディアも日本のメディアを引用する形で相次いで速報で伝えました。
このうち、国営の中国中央テレビは東京に駐在する記者が「日本の有権者が政治資金の問題と最近のインフレや円安の進行に不満を募らせていることが岸田政権の支持率の低下につながり、立候補しない理由の1つになったとみられる」などと伝えました。
米 エマニュエル駐日大使「同盟関係の新時代を切り開いた」
《拉致被害者の家族会など団体は》
拉致被害者の家族会代表「水面下の交渉リセット 残念]
日本被団協 事務局長「途中で放り出しているようで無責任」
広島県被団協 理事長「世界のリーダーであってほしかった」
広島県被団協 理事長「もっとやってほしいとは思えなかった」
《各地の受け止めは》
岸田首相の地元 広島市では
岸田総理大臣が来月の自民党総裁選挙に立候補しない意向を表明したことについて、地元の広島市では、驚きの声などが聞かれました。
50代の女性は「もう一度やると思っていたのでびっくりした。去年のG7広島サミットでは広島のためにも頑張っていたが、それ以降は頑張りが足りなかった感じがする」と話していました。
3歳の子どもを連れた30代の母親は「率直な意見でいうと続けてもいいと思っていた。次が誰になるのかに関心がある」と話していました。
80代の男性は「みんなの人気がそれほどでもない感じだから、今の状態だったらしかたがないのかもしれない」と話していました。
20代の大学生の男性は「続けてほしいが、自分が辞めたいというのなら選択を尊重してあげるべきだと思う」と話していました。
東京 銀座では午後0時ごろから新聞の号外
東京・銀座では午後0時ごろから新聞の号外が配られました。
都内の20代の男性は「このタイミングで辞めるのかと思い、びっくりしましたが、これまで頑張っていたので今後はゆっくりしてもらいたいです。新しい人には子育てしやすく暮らしやすい政策を期待したいです」と話していました。
静岡県から旅行で訪れた40代の男性は「裏金問題が話題になった時点で辞めてもいいと感じていたので、いまのタイミングは遅いのかなと思います。昨今は株価が乱高下しているので、新しい人にはそうした対策を期待したいです」と話していました。
都内の高校1年生の男子生徒は「やめるのは当然かなと思いますが、次の総理大臣が誰になるのか気になります。経済や外交問題などでリーダーシップをとれる人に次の総理大臣になってもらいたいです」と話していました。
JR新橋駅前では
大阪 梅田では
大阪・交野市に住む60代の男性は「『裏金問題』などがあったので賢明な判断だと思います。当初は期待していましたが、岸田カラーをうまく打ち出せなかった印象です。新しい総裁には円安や物価高などさまざまな課題に取り組むことを期待したいです」と話していました。
大阪市に住む70代の女性は「岸田総理の発言は国民のことをよくわかっているなと思っていたので、応援していました。立候補しないと聞いて残念です」と話していました。
神戸市に住む60代の男性は「内閣支持率も下がっていて、不祥事もあったので、立候補しないことはしかたがないと思います。判断が後手後手でリーダーシップを発揮できなかったのかなと思います」と話していました。
能登半島地震の被災地では
能登半島地震の被災者からは「もっと被災地に来て住民の声を聞いてほしかった」といった声が聞かれました。
石川県輪島市の中心部にある仮設住宅に住む60代の男性は「岸田総理は頑張っていたのではないでしょうか。街の景色はまだ発災当時から変わらないので、次の総理にも頑張って対応してもらいたい」と話していました。
また、自宅が全壊したという80代の女性は「もっと被災地に来て被害状況を確認したり住民の声を聞いたりしてほしかったです。次の総理にはまずは道路の復旧を早く進めてもらいたいです」と話していました。
両親が仮設住宅に住んでいる輪島市出身の40代の男性は「もう少し災害対応を急いでほしかったです。次の総理には地域の少子化が進むなかで輪島の朝市など観光支援の取り組みも進めてもらいたいです」と話していました。
専門家「政治とカネの問題 まだ決着つかず」
政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は「自民党にとって政治資金パーティーをめぐる裏金問題が最大の課題だったが、岸田総理大臣は、派閥解体を打ち出したものの、議員や秘書らが相次いで立件される中で党のトップとして責任をとっていないと、厳しく批判されていた。政治資金規正法の改正についても、パーティー券購入者の公開基準引き下げ以外は必ずしも具体的でなく、抜け穴どころか、事実上何もやっていないに等しいと、世間の評価は非常に厳しい。しかも、党内の根回しや調整をしないままみずからが決断したという名目で物事を進めたため、孤立してしまった」と指摘しました。
そのうえで「政治とカネの問題は、まだ決着が着いていない。次の総選挙では、政治とカネの問題をどう正していくかがいやおうなしに争点となる。新しく選ばれる総裁には、もう一度きちんと見直してもっと明確な形で改革を進めていくことが求められる」と話していました。