黒人を攻撃してきたトランプ氏に「なぜ黒人はあなたに投票すべきなのか」⇒トランプ氏「フェイクニュースの記者だ」(2024年8月2日『ハフポスト日本版』)

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全米黒人ジャーナリスト協会の年次大会に出席した共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏とABCニュースのレイチェル・スコット氏(2024年7月31日)
長年黒人に対して差別的な発言をしてきたアメリカの共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏が、黒人のジャーナリストから、「なぜ黒人があなたに投票すべきなのか」など、厳しい質問を突きつけられた。
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【動画】「なぜ黒人はあなたに投票すべきなのか」と質問したスコット氏と態度を非難するトランプ氏
 
トランプ氏はいくつかの質問には直接的な回答をせず、 「カマラ・ハリス副大統領は突然黒人だと言い出した」という新たな主張も展開した。
「なぜ黒人はあなたに投票すべきなのか」質問に…
トランプ氏は7月31日、イリノイ州シカゴで開催されたNABJ(全米黒人ジャーナリスト協会)の大会に出席して記者からの質問に答えた。
モデレーターの一人でABCの政治記者レイチェル・スコット氏は冒頭、「誰もが話したがらない重要な問題を取り上げたい」と切り出し、次のように尋ねた。
「あなたは、ニッキー・ヘイリー氏からバラク・オバマ前大統領まで、複数のライバルに向けられた『アメリカ生まれではない』という虚偽の主張を支持してきましたが、それは誤りです」
「あなたは、アメリカ市民である非白人の4人の下院議員に『出身地に帰れ』と言いました。また、黒人の地方検事を『ケダモノ』や『狂暴』といった言葉で表現しました」
「あなたは黒人ジャーナリストを攻撃して『負け犬』と呼び、彼らの質問を『愚か』で『人種差別的』だと言いました。マー・ア・ラゴフロリダ州の邸宅)で白人至上主義者と夕食をともにしました」
「そこでお伺いしたいのですが、あなたは今、黒人支持者に自分に投票するよう求めていますが、黒人有権者はなぜこのような発言をしたあなたを信用しなければならないのでしょうか?」
トランプ氏はこの質問への直接的な回答を避け、代わりに「こんなひどい態度で質問をされたのは初めてだ。こんにちは、ご機嫌いかがですかという挨拶もなかった」とスコット氏の態度を攻撃した。
「ABCの記者なのか?そうだろう。フェイクニュースのネットワークで、ひどいテレビ局だ。私は機嫌よくここに来たのに、けしからん態度だ。私はこの国の黒人を愛している。この国の黒人のために多くのことをしてきた」
カマラ・ハリス氏は「突然黒人になった」と主張
スコット氏はハリス氏に対する「DEI採用」という批判についても質問した。
DEIとは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の略で、人種や性別、性自認、年齢、障がいの有無など、多様な背景を持つ人を尊重し、受け入れることを意味する。
共和党の中には、女性で黒人、アジア系アメリカ人のハリス氏が民主党の大統領候補になったのは、能力ではなく「DEI採用」だと攻撃する政治家もいる。
スコット氏は、「共和党の連邦議員を含むあなたの支持者の中には、カマラ・ハリス副大統領にDEI採用というレッテルを貼る人もいます。あなたにとって受け入れられる言葉ですか?共和党員や支持者たちに止めるように言いますか?」と質問した。
この問いに、トランプ氏は 「DEIの定義は何か?」と返答。
スコット氏は「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンです」と回答したものの、トランプ氏が「定義は何か」という質問を繰り返したために、「カマラ・ハリス副大統領が大統領候補になった理由は、黒人女性だからだと思いますか」と尋ね方を変えた。
すると、トランプ氏は「ハリス氏はこれまで黒人だと言っていなかったのに、突然黒人を名乗り始めた」という持論を展開した。
「私は長い間、直接的ではなく間接的に(ハリス氏を)知っているが、以前はずっとインド系だといい、インド系であることだけを宣伝していた」
「彼女が数年前に黒人だと言うようになるまで、黒人であることを知らなかった。しかし今、彼女は黒人だと宣伝するようになっている。彼女はインド人なのか。それとも黒人なのか?」
スコット氏が、「ハリス氏はずっと自身を黒人女性だと言ってきた」 と指摘したものの、トランプ氏は「私はどちらも尊重するが、彼女は明らかにそうではない。彼女はずっとインド人だと言ったのに、突然黒人になった。誰かが調べるべきだと思う」と主張。スコット氏を 「敵対的 」で 「不快」だと非難した。
ハリスはカリフォルニア州生まれで、インド出身の母とジャマイカ出身の父をも持つ移民2世だ。
トランプの発言について、ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は声明で、「自分が誰で何者かについて、とやかく言う権利は誰にもない 」と述べた。
ハリス氏は31日にテキサス州ヒューストンで開かれた「シグマ・ガンマ・ロー女性クラブ」の会合に出席して、トランプ氏のNABJ大会での発言や態度は分裂をあおると述べた。
アメリカに必要なのは、真実を語るリーダー、事実を突きつけられても敵意や怒りで反応しないリーダーです。違いが私たちを分断させるものではないことを理解しているリーダーが必要です」
NABJは1975年からアメリカの黒人メディア関係者のために活動してきた非営利団体だ。トランプ氏が2024年の大会に出席することがが決まった後、出席者からは反発が起き、ワシントンポストのコラムニスト、カレン・アティア氏は30日に共同司会者を降りると発表した。
Satoko Yasuda