◆非正規は正規の約7割の賃金…「当然格差の要因」
―男女間の賃金格差に着目した理由は。
「日本の男女賃金格差は放っておけないものがある。2022年から(常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象に)格差の公表が義務化されたのは、格差是正のチャンスだが、どうすれば改善できるのかまでは詰められていない。そこに着手しないと、構造的な賃上げにはならない」
「まずは勤続年数の差。長時間労働など仕事と家庭の両立がしにくい状況がある。出産・育児などでキャリアが中断され、その後(両立可能な)非正規で戻るケースも多い。日本の非正規は正規の約7割の賃金しかもらえておらず、当然格差の要因になる」
―ほかには。
「女性管理職の登用が進まない点や、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)も大きい。女性、男性がそれぞれこうあるべきだという考えが根強く残っている」
◆女性が働ける、働きたいと思える環境整備を
―どう改善すべきか。
「5つの産業には格差縮小に向けた計画作成を要請している。政府に言われたから数値を良くすればいいということではなく、真の目的を見据えた対応が必要だ。要因分析をした上で、女性が働ける、働きたいと思える働き方改革など環境整備をしなくてはいけない」
―企業側の利点は。
「まず労働力が充足される。多様な価値観が入れば労働市場にイノベーションを起こし生産性を上げることに挑戦できる。女性の収入が増えれば、回り回って自分たちの商品を買ったりサービスを利用したりする人が増える。個別最適ではなく全体最適、という価値観で取り組んでほしい」
―社会保険料の負担を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」も要因だ。
「今回、政府として初めて出産後の働き方による世帯の生涯可処分所得を試算した。正社員で就労を継続した場合、離職して再就職しない場合と比べて約1億6700万円多くなる。衝撃的な数字だ」
―年収の壁を越えて働く事への理解は広がるか。
「約40年前に男女雇用機会均等法を作ったのと同時期に『第3号被保険者』も作った。個人的には雇用の場における均等を進める一方で、内助の功にも配慮した形ではないかと思ってきた。男性側にも『扶養の中にいて欲しい』という意識がある場合がある」
―賃金格差が少子化につながっている可能性も指摘した。
「東北や北関東、甲信越での若い女性の流出が特に多く、未婚男性の比率が高くなっている。こうした地域と男女賃金格差が大きい地域には緩やかな相関関係があり、少子化の要因にもなり得る。地域経済の持続性を高めるためにも対応が求められている」
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