大学の再編 地域の実情に目配りを(2024年7月31日『東京新聞』-「社説」)

 中央教育審議会文部科学相の諮問機関)の特別部会は、急激な少子化に対応し、統廃合や定員減などによる再編で大学規模の適正化を図るとする中間まとめ案を了承した。全国で約800ある国公私立大を、同規模で維持するのは難しいとの判断からだ。
 ただ、地方の私立大は地元での進学希望者の受け皿となり、地域が必要とする人材育成を担ってきた。大学再編に当たっては、経営の状況にとどまらず、地域の事情にも十分配慮する必要がある。
 中間まとめ案は、定員割れや不採算状態が続く大学の定員を減らし、撤退を促すよう指導を強化すると明記。財務状況が厳しい大学を統合する場合、一時的に定員割れが生じても、補助金を減額する罰則などを緩和する。大学の新設についても、将来の学生数確保の見通しなどに基づいて設置認可を厳格に審査するよう求めた。
 大学や自治体、産業界で、地域の実情に合った大学の規模や人材育成について協議する場をつくることも促す、としている。
 文部科学省の推計では、18歳人口は現在の約110万人から2040年には約82万人に減少。23年に63万人だった大学入学者は40年には51万人程度に減る見通し。
 少子化の影響は、都市部よりも地方の大学に強く及んでいるのが実情だ。23年度は地方を中心に私立大の53%が定員を割った。
 限られた数の学生を奪い合う構図となっており、大学は自身の経営努力だけでは、定員割れや募集停止、経営破綻を回避できない状況に追い込まれている。
 大学や短大、専門学校などの高等教育機関への進学率は8割を超えているが、地方の高等教育機関は今でも不足し、地方の大学進学率は都市部に比べて低い。
 地方での大学統廃合が行き過ぎれば、高等教育機関の空白地域が生まれる恐れもある。進学を望む若者が、どこに住んでいても高等教育を受けられる機会を保障することが大切だ。
 私立大に比べて安い国公立大の授業料を値上げして均衡を図ろうとする動きがある一方、私学助成を増やして私立大の授業料値下げを求める声も根強くある。国の財政支援策も検討が必要だ。
 特別部会は年内の答申を目指すが、経営の状況とともに、地域の事情や学びの機会を保障することも重視しなければならない。