先天性難聴千人中1・62人 信州大の大規模調査(2024年7月24日『共同通信』)

 生まれつき音が聞こえない、聞こえにくい「先天性難聴」は、出生千人当たり1・62人であることが、信州大の耳鼻咽喉科頭頸部外科学のチームが長野県で行った大規模疫学調査で明らかになった。国内の先天性難聴に関する包括的な報告は初めてという。
 長野県では、新生児を対象にした聴覚スクリーニング検査を2000年代から実施。精査が必要とされた場合はほぼ全例が信州大病院で診断されていることから、発生頻度や原因に関する詳細な分析が可能になった。

 チームによると、09年からの10年間で生まれた15万6038人のうち約99%に当たる15万3913人が検査を受け、最終的に249人が難聴と診断された。内訳は両耳が130人、片耳は119人で、千人当たりではそれぞれ0・84人、0・77人だった(小数点以下第3位を四捨五入)。
 難聴の原因としては、両耳では遺伝性が56%と最も多く、片耳では、聴覚の神経の発達が不十分な「蝸牛(かぎゅう)神経形成不全」が40%と最多だった。
 抗ウイルス薬による治療の対象になり得る「先天性サイトメガロウイルス感染症」による難聴は、両耳、片耳とも4~5%だった。
 難聴の程度については、補聴器の対象になる中等度と人工内耳手術の対象となる高度以上の割合は、両耳の場合はほぼ半々、片側の場合は約4対6で高度以上が多かった。
 調査結果をまとめた吉村豪兼講師は「国内で初めて難聴の頻度や原因別の割合が詳細に分かり、患者家族に治療法や経過を説明する際にも役立てることができる」と話している。調査内容は国際専門誌に掲載された。