注目の兵庫県知事、候補者に選んだのは私だ 疑惑明らかになれば職を辞すべき 松井一郎(2024年7月20日『週刊フジ』)

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斎藤知事にはパワハラ・おねだり体質疑惑が直撃している
ドナルド・トランプ米大統領の暗殺未遂事件(13日=日本時間14日)は、自宅のテレビで第一報を知った。トランプ氏は軽傷だったが、集会に参加していた元消防士が家族をかばって亡くなり、2人が重傷を負った。民主主義を破壊するこのような暴挙は決して許してはならない。
先日、三回忌を迎えた安倍晋三元首相もそうだが、影響力がある世界の政治家は命の危機にさらされていることを実感した。
安倍氏とトランプ氏といえば強い信頼関係、盟友関係で知られた。2019年6月、大阪でG20(20カ国・地域)首脳会合が開催された。ホスト役の安倍氏昭恵夫人が、トランプ氏とメラニア夫人の来日を歓迎して、笑顔で語り合っていたシーンを思い出す。
G20のウエルカムパーティーは、大阪城天守を一望できる西の丸庭園の大阪迎賓館で催された。トランプ氏が宿泊したホテルは都心に位置しながら自然が豊かで、10年かけて周辺を整備していた。
私は当時、大阪市長として関西国際空港で各国首脳のお見送りをした。トランプ氏が「大阪はビューティフル・シティ。ありがとう」と言ってくれたのを覚えている。
「強い指導者」を世界に印象づけた
今回の暗殺未遂事件で、トランプ氏は「強い指導者」「暴力に負けない覚悟」を世界に印象付けた。11月の米大統領選で勝利する可能性も高まった。その時、日本にトランプ氏に対峙(たいじ)できる政治家がいるのだろうか。安倍氏はもういない。心配だ。
さて、兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ・おねだり体質疑惑が深刻化している。告発文書を作成して亡くなった元県西播磨県民局長の男性は「(百条委員会は)最後までやり通してください」「死をもって抗議する」というメッセージとともに、斎藤氏の疑惑を示す発言を記録した音声データや陳述書を残していたという。
まず、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。ご家族の方々には心からお見舞いを申し上げます。
すでに疑惑を調査する第三者機関や、文書の内容を調査する県議会の調査特別委員会(百条委員会)が設置されている。斎藤知事には「辞職すべき」という声も高まっているが、第三者機関や百条委員会で徹底的に調査して、県民に真実を明らかにしてほしい。うやむやにしてはならない。
斎藤知事は、私が大阪府知事時代、総務省から財政課長として出向していた。当時は、高圧的な態度で周囲に接したり、民間業者におねだりする様子はなかった。21年の兵庫県知事選の候補者に選んだのは私だ。選挙戦では、日本維新の会自民党の一部が推した。
斎藤知事は疑惑を否定しているが、もし徹底調査で疑惑が明らかになれば、職を辞するべきだ。そういう人間性を見抜けなかった私や維新としても、有権者に謝罪しなければならない。 (前大阪府知事、前大阪市長 松井一郎