「勝ったら次の大会があると、子どもたちはどんどん成長していく。サッカーでもそうしてあげたい」と話す長谷川百合矢教諭(左)と渡辺典子教諭=さいたま市で
◆「なでしこ」活躍で選手増 それでも少ない女子チーム
6月、さいたま市の荒川河川敷にあるスポーツ施設レッズランド。市立与野西中の長谷川百合矢(ゆりや)教諭は創部に関わった原山中と常盤(ときわ)中との試合を見つめていた。「初めて(第三者の立場で)この大会を見た。感慨深いですね」。3年生はこの一戦で引退となり、1、2年生とともに勝って泣き、負けて泣く生徒たちがいた。
長谷川教諭は体育大学時代のサッカー部経験から、2007年に赴任した原山中で部活を立ち上げた。男子に交じって女子もいたサッカー部で女子の比率が増え始めた2009年、クラブチームがいる女子の15歳以下の大会に初参加。2011年に女子日本代表「なでしこジャパン」がワールドカップを初制覇した後は、競技の普及の鍵を握るこの世代に脚光が当たったと振り返る。
ただ、市内に他に女子サッカー部がある中学はなく、大学生との練習試合では苦戦。「どうにかできないか」と思う中で常盤中に赴任となり、陸上部顧問の後、再び女子サッカー部を創部。「2校あるなら大会を」との声にも押され、以来2校での新人戦などが恒例になっている。
今春、与野西中に赴任。今はバレーボール部顧問を務めながら、女子サッカー部が広まる道を探っている。例えばどこか1校を拠点に、近隣校との合同チームをつくることも選択肢の一つだという。
◆プロの前座試合に中学生が…地元クラブもアシスト
男子に交じってプレーする女子が全国に一定数いる一方、中学校の女子サッカー部は男子に比べ少なく、競技離れしやすい「中学問題」を抱えてきた。同じく市内の中学校に勤め、埼玉県協会で副会長と女子委員会委員長を務める渡辺典子教諭は「県協会として中学と高校年代とでフェスティバルという交流戦を開催したり。普及のためにまずは楽しむ人を増やそうとしている」という。
プロクラブも協力する。市大会の会場のレッズランドは、さいたま市が拠点のプロサッカーWEリーグ三菱重工浦和レッズレディースの練習場。ホームタウン担当の安部未知子さんは「プロの下部組織やクラブチームにいくほどではないけどサッカーをやりたい子の受け入れ先が、部活動であることは大事なこと」。プロの公式戦の前座試合として中学生に会場を提供したり、WEリーグの地元クラブの大宮、ちふれ埼玉に先生たちの思いをつなぎ、部活動で汗を流す生徒の活躍の場を創出する。
勝てば次の大会に進む他競技のような舞台をどうつくるか。長谷川教諭は「勝ったら次の大会があると、子どもたちはどんどん成長していく。サッカーでもそうしてあげたい。それが、頑張っている2校の生徒に対する恩返しになると思っている」と話す。