元検事正起訴の検察、初めて事件概要を公表 対応一転に評価分かれる(2024年7月12日『産経新聞』)

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北川健太郎被告
大阪地検検事正の弁護士、北川健太郎被告(64)が12日に準強制性交罪で起訴された事件。捜査の主体となった大阪高検は、被害者のプライバシー保護を理由に事件の概要をこれまで一切説明してこなかったが、起訴にあたって対応を一転。発生日や場所などの詳細を初めて公表した。専門家からは一連の対応に理解を示す見解がある一方で、「後手」との批判もあがった。
「元大阪地方検察庁検事正に係る刑事事件の処理について(公表)」。12日午後3時過ぎ、大阪高検はこう題した文書を報道各社に配布した。文書には被告の起訴に加え、事件発生日や場所といった起訴内容の概要が記載されていた。
大阪高検が北川被告を逮捕した6月25日に配布した文書には、名前や職業などの記載があるのみで、通常設けられる報道各社を集めての説明の場もなかった。こうした対応に検察内部からも「身内に甘いと言われても仕方ない」と疑問視する声が出ていた。
一方、この日は、逮捕時になかった説明会を実施。約20分にわたって高検の小橋常和次席検事が報道陣の質問に答え、被害者が当時の部下であることや、事前に複数人で飲食店で酒を飲んでいたといった経緯を明かした。
逮捕時と対応が異なる理由を問われると、小橋次席は「今後の公判で一定の事実が明らかになるため」と説明。これまでの対応に批判的な意見や報道が多くあったことを踏まえてか「可及的速やかに捜査しており、いわゆる隠蔽と言われることは一切なかった」と語気を強める場面もあった。
高検の一連の対応について、事件捜査に詳しい近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「逮捕段階で被害者保護を優先したのはやむを得ない」と理解を示す。逮捕の時点では不起訴になる可能性が残っており、公の法廷で審理されるかどうかが分からないからだ。
「公の場で被告の罪を追及すると決めた以上、被害者保護に配慮しながらも説明責任を果たすべき段階。逮捕時と状況が異なり、妥当な判断だ」と評価する。
一方、東京地検特捜部の副部長などを歴任した検察OBの若狭勝弁護士は「元検事正を逮捕する以上、相当な証拠がなければできない。ましてや約6年前の事件。起訴する可能性は極めて高かったはずで『起訴したから説明する』というのは詭弁(きべん)だ」と批判する。「説明を避けることでさまざまな憶測を呼び、痛くもない腹を探られることもある」として、組織の危機管理に疑問を呈した。

大阪地検 元検事正の64歳弁護士を性的暴行の罪で起訴(2024年7月12日『NHKニュース』)
 
大阪地方検察庁でトップの検事正を務めた64歳の弁護士について、検察は6年前、当時住んでいた大阪市内の公務員の宿舎で、酒に酔って抵抗できない状態の部下の女性に性的暴行をした罪で起訴しました。
起訴されたのは、2018年2月から2019年11月まで大阪地検のトップの検事正を務めた、弁護士の北川健太郎被告(64)です。
検察によりますと、北川元検事正は、2018年9月、当時住んでいた大阪市内の公務員の宿舎で、酒に酔って抵抗できない状態の部下の女性に性的暴行をした罪に問われています。
検察は、認否について明らかにしていません。
検察によりますと、事件の前、被害者を含む複数人で飲食店で酒を飲み、関係者によりますと、その後、宿舎で2人で飲酒していたということです。
ことしに入って、被害者から検察に申告があり、捜査していました。
先月、大阪高等検察庁が元検事正を逮捕した際、容疑の詳しい内容について「被害者のプライバシーを考慮した」として明らかにしていませんでした。
大阪高検 小橋次席検事「極めて遺憾 深くおわび」
大阪高等検察庁の小橋常和次席検事は「法令の順守に厳格であるべき検察庁の幹部職員が、在職期間中に重大な犯罪行為に及んだことは極めて遺憾であり、国民の皆様に深くおわびします。このような事態が二度と発生しないように幹部職員をはじめとした全職員の綱紀の保持の徹底に努めて参りたいと考えております」とコメントしています。
北川健太郎元検事正について
北川健太郎元検事正は石川県出身で金沢大学を卒業後、昭和60年に任官し、東京地検を振り出しに関西を中心にキャリアを重ねてきました。
大阪地検刑事部長や次席検事、それに最高検刑事部長などを歴任し、大阪地検のトップの検事正を最後に、定年まで数年を残して2019年11月に退官しました。
退官したあとは、大阪弁護士会に弁護士登録しています。
関係者によりますと、北川元検事正は「関西検察のエース」と呼ばれ、高検トップの「検事長候補の1人」との声も上がっていたということです。