<7.7東京都知事選・現場から>
東京といっても、財政が豊かな23区と、多摩地域の市町村では、住民へのサービスに差がある。「多摩格差」と呼ばれ、その一つが小中学校の給食無償化。23区は全て実現した一方、多摩地域では半数近くの自治体が実施を見送り、住民からは不満の声も漏れる。(昆野夏子、岡本太)
◆「多摩26市の間に分断と格差が生じる」
「多摩26市の間に分断と格差が生じる」。1月下旬、多摩地域の市長が集まる市長会。都が本年度から給食無償化の半額補助制度を始めることに、町田市の石阪丈一市長が懸念を示した。他にも同様の発言をした市長がいたという。
無償化には億単位の恒久財源が必要となるため、財政力で劣る自治体にはハードルが高い。多摩30市町村のうち、4月時点で無償化できたのは14市町村。4市が6月議会で無償化の予算案が可決されて実施に動くが、残る12市町に具体的な予定はない。
◆「市は子育てしやすい町っていうのに」
給食無償化が実現していないあきる野市で、中学生の娘と小学生の息子を育てる母親(44)は「不公平と思ってしまう。市も『子育てしやすい町』をうたうのに、一番ネックの経済面は助けてもらえないなんて」と不満を口にする。
中嶋博幸市長は「都が半額補助しても、毎年1億円以上の経常経費を費やすのは厳しく、慎重に考えざるを得ない。子育て支援は総合的に考えていかないといけない」と述べる。
「『なぜ23区はできて、ここはできないのか』とプレッシャーがすごい」「無償化しないと子育てに熱心ではないと思われる」
◆2023年度は高校生の医療費無償化も問題に
企業や商業エリアが多く税収に恵まれている23区に比べ、多摩地域は財政力に劣る傾向がある。近年は多摩地域内でも、武蔵野市など23区隣接やJR中央線沿線を中心に財政力のある自治体が増え、それ以外の地域との差が拡大。「多摩『内』格差」へと姿を変えつつある。昨年度から都が始めた高校生医療費の無償化でも問題になった。
◆「不安なく施策を実施していく財源が・・・」
都の元局長で今年1月に初当選した八王子市の初宿(しやけ)和夫市長は「八王子市に来て一番感じたのは財源がないこと。不安なく施策を実施していくための財源は、都にいた時の感覚からすると非常に心もとない」と打ち明ける。都道の整備の遅れも指摘し「区部と比べて人口の規模が違うが、災害時を考えると整備を進めてほしい」と訴える。
ある市長は「正直言って、ふざけんなと思う」と怒りを隠さない。給食無償化以外にも道路整備や産業振興など、さまざまな分野で23区と差が広がっていると感じている。「こっちは金がない。職員の努力だけじゃどうにもならない」(昆野夏子、岡本太)
【関連記事】品川区は「学用品」も新学期から無償化 地方から注がれる羨望のまなざし、拡がる格差に識者は
【関連記事】東京都が子育て支援をやればやるほど加速する「東京一極集中」 見劣りする地域は「転居先の候補から外す」現実
【関連記事】多摩地域のPFAS汚染「23区で起きたら対応違うはず」 なぜ東京都は米軍横田基地へ調査を要請しない
【関連記事】東京都が子育て支援をやればやるほど加速する「東京一極集中」 見劣りする地域は「転居先の候補から外す」現実
【関連記事】多摩地域のPFAS汚染「23区で起きたら対応違うはず」 なぜ東京都は米軍横田基地へ調査を要請しない