泉房穂さんが語る「小池百合子知事の評価できる点、できない点」 東京都知事は「日本で唯一の大統領」(2024年6月14日『東京新聞』)

 国民負担増から国民を救う政治へと転換する「救民内閣」の発足を掲げて発言が注目されている前兵庫県明石市長、泉房穂氏(60)が東京新聞の取材で東京都知事選の意義を語った。「誰が知事に選ばれるかで、東京から日本をどのように変えるかを決める可能性も秘めている」と首都のリーダー選びの重要性を主張した。主なやりとりは以下の通り。(聞き手・関口克己)
 泉房穂(いずみ・ふさほ) 1963年、兵庫県明石市生まれ。弁護士、社会福祉士。東大教育学部卒業後、NHKディレクターなどを経て、司法試験合格。2003年衆院選民主党公認で兵庫2区から出馬し比例近畿ブロックで初当選。11年に明石市長。19年に市職員への暴言騒動で辞職、出直し選で当選。23年4月まで3期12年の在任中、18歳までの医療費▽中学生の給食費▽第2子以降の保育料▽市内の遊び場▽満1歳までのおむつ—の「五つの無料化」を市独自で実現した。
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明石市長の泉房穂氏(市川和宏撮影)
 ―自治体のトップを務めた立場から見て東京都や都知事とは、どんな存在か。
 「スウェーデン一国並みの財源と権限を持つという日本で唯一の大統領とも言える人物。東京は独立国家になれるほどの力を持ち、政官財やメディアが集中している。東京から日本をどのように変えるかを決める可能性すら秘めている重要な選挙だ」
明石市では国は動かせないが東京はできる
小池百合子知事の任期満了に伴う選挙だが、争点は。
 「小池都政2期8年の評価そのものだ。猪瀬直樹氏は1年、舛添要一氏は2年余で辞任し、評価のしようがない。だが、8年務めた小池氏は評価できる点、できない点の両方がある」
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都知事選について話す前明石市長の泉房穂氏(市川和宏撮影)
―評価できる点とは。
 「子育て支援策だ。私は明石市長として、18歳までの医療費無償化、第2子以降の保育料無償化などを全国初で実現したが、東京都ではそれを上回った政策もある」
―具体的にはどんな政策か。
 「私は明石市長だった2022年12月、市独自の予算で児童手当の支給を所得制限なく高校生まで拡充すると表明した。その翌月、小池氏は東京都では0歳から18歳以下の都民1人に月5000円を支給すると発表した。国も追随せざるを得なくなり、今年10月から児童手当の支給を中学生までから高校生までに拡大し、所得制限もなくす。明石市では国は動かせないが、東京都は国を動かす実例だ」
既得権益側に寝返ってしまった感じ
―評価できない点は。
 「その子育て支援策も限界があったとも言える。都は潤沢な予算を持つし、プロジェクションマッピングに象徴されるような無駄遣いをなくせば、保育料無償化は第2子以降ではなく、第1子からできるはずだ。小池氏が最初の知事選で掲げた介護離職や残業などの『七つのゼロ』の公約は、ほとんど達成できていないのではないか。神宮外苑再開発も既得権益側に寝返ってしまった印象だ」
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都知事選について話す前明石市長の泉房穂氏(市川和宏撮影)
―小池氏に、蓮舫参院議員が挑む構図と目される。
 「知名度もキャリアもある蓮舫氏の立候補で、有権者に大きな選択肢ができた意義は大きい。ただ、出馬会見で公約を示さなかったことはもったいなかった。『小池都政をリセット』と語ったが、子育て支援策も含めて全否定するのか、一部は評価するのか、もっと拡充するのかは明確にした方が良かった」
都知事選で候補者に求められるものは何か。
 「東京都、都民へのラブ(愛)だ。国政の課題を争点にすることは否定しないが、まずは都民の生活、都民の未来のための政策を優先して語ってほしい」
政権交代への声、裏金で一気に強まった
蓮舫氏は出馬会見で、小池氏と自民党の距離の近さを批判したが、国政の現状をどう見ているか。
 「国民負担増の政治から国民を救う『救民内閣』を訴えているが、その実現に向けては、政権交代だけではなく令和の大改革までの七つのステップが必要だと思っている。最初のステップは政権交代への世論喚起。裏金事件で世論喚起は一気に進んで、自公政権の継続よりも新しい政権を求める声が強まった」
―裏金事件は国民の政治への視線をどう変えたか。
 「国民を苦しめる政策を続ける中、一部の既得権益のための政治を変えるメスを入れずに、負担を増してきたことへの国民の怒りが現れたのが裏金事件。自民党に代わる新しい政治を求めている国民の空気は変わらない。自公政権に代わる政権が一気にできる状況になってきたと感じる」