天皇、皇后両陛下が「思い出の地」オックスフォード入り(2024年6月28日『毎日新聞』)

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 英国訪問中の天皇、皇后両陛下は28日午前(日本時間同日夜)、滞在していたロンドンを離れ、20代のころに留学していた「思い出の地」であるオックスフォードに入られた。それぞれの留学先を訪ね、市内を散策する。

 天皇陛下は1983~85年、オックスフォード大マートン・カレッジで18世紀のテムズ川の河川交通史の研究に打ち込んだ。皇后雅子さまは88~90年、同大ベーリオール・カレッジで外務省の研修として留学した。陛下は2001年以来、雅子さまは留学終了後初めてのオックスフォード再訪となった。

 陛下は留学中に寄宿舎に入り、洗濯もアイロンも自分でする生活を初めて送った。研究や寮生活を通じて各国から集う若者たちと交流。英王室のもてなしを受けたり、欧州諸国を訪問して各地の王室文化に触れたりもした。

 陛下は今回の英国訪問中、スピーチや人々との交流の中でたびたびオックスフォードの話題に触れた。バッキンガム宮殿で開かれた晩さん会では「オックスフォードの地を訪れ、学術・研究・教育分野での協力や若い世代の交流の促進に少しでも貢献できれば」と再訪に期待を示していた。

 また、陛下は今回の訪英中に留学時の警護官、故ロジャー・ベーコン氏の夫人と懇談した。24日の行事終了後、滞在先のロンドンのホテルでプライベートで面会したという。

 留学時、ロンドン警視庁からロジャー氏ともう1人が派遣され、1週間交代で寄宿舎の陛下の隣の部屋に住み警護にあたった。ロジャー氏は亡くなっており、今回は英国政府を通じて、夫人の面会希望が伝わったという。陛下は著書で「2年間を有意義に使えたかげには、彼らの尽力があったことも忘れることはできない」とロジャー氏らへの感謝を書き記している。

 陛下は27日、ロンドン郊外のウィンザー城を訪ね、エリザベス女王と夫フィリップ殿下の墓に供花した。生前の女王夫妻から受けた温かいもてなしに感謝する陛下の希望で実現した。

 両陛下は28日で日程を全て終え、同日夜(日本時間29日未明)にブライズノートン空軍基地から政府専用機で帰国する。【オックスフォード山田奈緒