チャールズ英国王が日本語で「英国にお帰りなさい」…天皇陛下と晩餐会で「カンパイ!」(2024年6月26日『読売新聞』)

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 【ロンドン=水野祥、沖村豪】25日に開かれたチャールズ国王夫妻主催の 晩餐ばんさん 会。天皇陛下は400年以上にわたって紡がれた日英の友好関係を国王と確認し、未来に向けて杯を交わされた。敵対した歴史については、祖父と父の言葉をひき、思いを継承する意思を示された。
25日、ロンドンでの晩餐会で、スピーチするチャールズ国王を見つめられる天皇陛下=AP
 バッキンガム宮殿のボールルームは、バラやイロハモミジの木で彩られ、正装に勲章を付けた王族らで華やかな雰囲気に包まれた。
 あいさつに立ったチャールズ国王は冒頭、英留学された天皇、皇后両陛下に対し「英国にお帰りなさい」と日本語で切り出した。日本のキャラクター「ハローキティ」やゲーム「ポケットモンスター」を話題に笑いを誘い、約10分間にわたるあいさつを「カンパイ!」と日本語で締めくくった。
 先の大戦で日本と交戦した歴史については、「暗い時代」と語ったが、江戸時代の徳川家康と先祖の交流を持ち出すなど、「友情」や「パートナーシップ」という言葉を使って、協力関係の大切さを強調した。
 過去の歴史について、天皇陛下は「友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありました」と語られた。その上で、「私の祖父や父が、天皇としてこの地を訪れた際の 想おも いがいかばかりであったか」と感慨を述べられた。
 1998年に上皇さまが訪英された際は、まだ大戦の傷痕がくすぶっていた。上皇さまの「人々の受けた傷を思う時、深い心の痛みを覚えます」というお言葉は、両国間のわだかまりを解くきっかけともなった。
 陛下はこの日、昭和、平成の天皇の訪英時のあいさつを紹介された。「祖父は両国の人々が、心を開いて話し合うことを切に希望し、父は理解し合う努力を続け、世界平和と繁栄のため、手を携えて貢献していくこと」を願われたと説明された。
 再生医療やがん研究、環境問題など、お言葉の多くは日英の研究者の挑戦や、長きにわたる友好親善の発展を願う内容だった。
 陛下のお言葉について、関東学院大の君塚直隆教授(イギリス政治外交史)は、「祖父や父の交流を継承しつつ、両国の明るい未来を望まれる陛下の思いが感じられた」と語った。
 両陛下は晩餐会に先立ち、ウェストミンスター寺院で、無名戦士の墓に供花された。
 

天皇陛下に英国最高勲章「ガーター勲章」、明治から5代続けて天皇に授与(2024年6月26日『読売新聞』)
 
 天皇陛下とチャールズ国王は25日、日英の最高勲章「大勲位菊花章 頸飾けいしょく 」と「ガーター勲章」を贈りあった。同勲章は明治から5代続けて天皇に授与されたことになる。キリスト教圏の君主を除くと異例の処遇で、日英の強固な絆が示された。
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チャールズ国王から天皇陛下に贈られたガーター勲章(ロンドンで)
 ガーター勲章は1348年、舞踏会で伯爵夫人が靴下留めの「ガーター」を落とし、嘲笑されそうになった時、国王エドワード3世がそれを拾って自分の脚につけ、「思い 邪よこしま なる者に災いあれ」と言って救ったことがきっかけで誕生したとされる。
 ネックレスの頸飾、肩から下げる大綬章、星形の勲章、国王の言葉を記したガーターからなり、男性は左膝、女性は左腕にガーターを付けるとされてきたが、今は着用しないという。
 受章者を決めるのは英国君主で、君主自身や王族、騎士のほか、外国君主も対象だ。明治天皇日露戦争直後の1906年に授与された。昭和天皇は日英が開戦した41年に 剥奪はくだつ されたが、71年の訪英時に復帰した。
 陛下がチャールズ国王に贈られた大勲位菊花章頸飾は1888年に制定された。菊花章はネックレスの頸飾と肩からかける大綬章に分かれ、頸飾が最も位が高い。
 国王には皇太子時代の1971年、昭和天皇が英国公式訪問の際、大綬章を贈っており、今回の訪問にあたり、14日の閣議大勲位菊花章頸飾の授与が決定した。英国君主に対しては明治時代のエドワード7世国王以来、6代続けての授与となった。