天皇皇后両陛下 チャールズ国王夫妻主催の晩さん会に(2024年6月26日『NHKニュース』)

国際親善のため国賓としてイギリスを公式訪問している天皇皇后両陛下は、首都ロンドンのバッキンガム宮殿で国王夫妻主催の晩さん会に臨まれました。

チャールズ国王からの招待を受けイギリスを訪問している両陛下は、現地時間の25日夜、歓迎の晩さん会に臨むため、バッキンガム宮殿を訪ねられました。

天皇陛下は、受章したばかりのイギリスで最も歴史がある勲章「ガーター勲章」を身につけ、国王と並んでことばを交わしながらゆっくりと歩いて会場に入られました。

晩さん会には日英両国のおよそ170人が出席し、まずチャールズ国王がスピーチに立って、冒頭、「英国にお帰りなさい」と日本語で語りかけました。

そして、「日英両国のパートナーシップの核心にあるのは、緊密な友情です」としたうえで、時折ユーモアを交えながら、両国の交流の長い歴史に触れ、日英関係のさらなる発展を祈ることばを述べました。

続いて天皇陛下が、長い年月をかけ世代を超えた人々の交流を通じて両国の関係が育まれてきたとしたうえで、「裾野が広がる雄大な山を、先人が踏み固めた道を頼りに、感謝と尊敬の念と誇りを胸に、更に高みに登る機会を得ている我々は幸運と言えるでしょう。今後とも日英両国がかけがえのない友人として、人々の交流を通じて真にお互いを理解し合う努力を弛みなく続け、永続的な友好親善と協力関係を築いていくことを心から願っています」と英語でおことばを述べられました。

歓迎式典や馬車でのパレードなど昼ごろから続いた公式行事を終えた両陛下は、現地時間の午後11時すぎに宮殿を出て、宿泊先のホテルに戻られました。

イギリス滞在は28日までの予定で、26日は、天皇陛下がヨーロッパ最大規模の生物医学分野の研究所などを視察し、世界的な金融街「シティ」の代表らが主催する歓迎の晩さん会に臨まれる予定です。

チャールズ国王 日本語で「英国にお帰りなさい」

バッキンガム宮殿で開かれた晩さん会で、チャールズ国王はスピーチの冒頭「英国にお帰りなさい」と日本語で述べ、天皇皇后両陛下への歓迎の気持ちを表しました。

そして「日英両国のパートナーシップの核心にあるのは、緊密な友情です。これは、国際ルールとグローバルな制度の重要性に対する相互理解に基づくもので、最も暗い年月をも含んだ歴史の教訓の上に築かれてきました」とした上で「今日(こんにち)、私たちはこれらの原則がかつてないほど問われる世界に直面しています。私たちが共有している自由、民主主義、法の支配という価値観がこれほど重要になったことはありません」と強調しました。

さらに、日英両国の経済的なつながりや、気候変動対策に向けた共同研究、それに安全保障面での協力などに触れ「このような共通の努力のすべてを支えているのは、地理的な隔たりを乗り越えた日英両国民の間の永続的な絆です」と述べました。

またチャールズ国王はスピーチの中で、日本の人気キャラクターで、イギリス生まれという設定の「ハローキティ」や、日本発の人気ゲーム「ポケットモンスター」の話題をユーモアを交えて紹介し、会場の笑いを誘っていました。

スピーチの最後にチャールズ国王は、1613年に徳川家康が当時のイングランド国王ジェームズ1世に送った、両国の緊密な関係を示す親書について紹介した上で「400年以上たった今でも、この思いは私たちの友情の中心に生き続けています。心からの親しみと明るく前向きな気持ちを持って、天皇皇后両陛下と日本国民の皆様に、そして日英関係のこれからの400年のために乾杯をささげます」と述べ、再び日本語で「乾杯!」と締めくくりました。

天皇陛下 晩さん会でのおことば 

天皇陛下は、晩さん会でのおことばの中で、「日英両国には、友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありましたが、苦難のときを経た後に、私の祖父や父が女王陛下にお招きいただき天皇としてこの地を訪れた際の想いがいかばかりであったかと感慨深く思います」と述べられました。

そのうえで、「私の祖父は、1971年の晩餐会で、日英両国の各界の人々がますます頻繁に親しく接触し、心を開いて話し合うことを切に希望し、また、私の父は、1998年に同じ晩餐会で、日英両国民が、真にお互いを理解し合う努力を続け、今後の世界の平和と繁栄のために、手を携えて貢献していくことを切に念願しておりました」と過去2回の天皇国賓としてのイギリス訪問を振り返られました。

さらに、「日英関係は、長い年月をかけ世代を超えた人々の交流を通じて育まれてきました。今回の英国訪問を通じて、両国の友好親善関係が、次代を担う若者や子どもたちに着実に引き継がれ、一層進化していく一助となれば幸いです」と話されました。

そして最後に、「我々の時代においては、政治・外交、経済、文化・芸術、科学技術、教育など、実に様々な分野で日英間の重層的な連携・交流が加速しており、日英関係はかつてなく強固に発展しています。裾野が広がる雄大な山を、先人が踏み固めた道を頼りに、感謝と尊敬の念と誇りを胸に、更に高みに登る機会を得ている我々は幸運と言えるでしょう。今後とも日英両国がかけがえのない友人として、人々の交流を通じて真にお互いを理解し合う努力を弛みなく続け、永続的な友好親善と協力関係を築いていくことを心から願っています」と述べられました。

ガーター勲章とは 

イギリス王室によりますと、ガーター勲章は1348年、当時のイングランド国王、エドワード3世がアーサー王伝説の「円卓の騎士」にならって創設した、イギリスで最も歴史がある勲章です。

勲章の授与には騎士団の一員に加えるという意味があり、勲章には騎士団のモットーである「悪意を抱く者に災いあれ」という文字が中世フランス語で書かれています。

受章者は君主がみずから選び、イギリス王室のメンバー、大きな功績が認められたイギリス国籍の保持者、そして外国の君主など、3つに分類されます。

このうちイギリス国籍の保持者としては、これまでチャーチル元首相やサッチャー元首相などが受章し、現在はメージャー元首相やブレア元首相などが名前を連ねています。

また、外国籍では現在ノルウェースウェーデンデンマーク、オランダ、スペイン、そして日本の6か国の合わせて8人の君主などが受章しています。

原則としてキリスト教国の君主などが対象ですが、日本は日英同盟の締結をきっかけに1906年明治天皇が初めて受章したあと、1912年に大正天皇が、1929年に昭和天皇が受章しました。

このうち昭和天皇は第2次世界大戦を理由に1941年に受章を剥奪され、その後、1971年のイギリス訪問の際に回復されました。

また、上皇さまは在位中の1998年に受章されました。

この際、当時のエリザベス女王の夫、フィリップ殿下が第2次世界大戦で日本軍の捕虜になった元兵士などの反対を背景に難色を示したと報じられ、フィリップ殿下がみずからそうした報道を否定する声明を出す事態となりました。

ロンドン郊外のウィンザー城では毎年6月、敷地内のセントジョージ礼拝堂でガーター勲章の受章者による式典が行われ、受章者は勲章をつけ、マントを羽織った正装姿で音楽隊や衛兵とともに礼拝堂まで行進します。

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