通常国会が閉会し、秋の自民党総裁選に注目が集まる中、党内で「岸田降ろし」の動きが活発化している。派閥のパーティー収入不記載事件などの対応を巡って、地方組織で高まっていた岸田文雄首相(自民総裁)への不満が中央にも波及した形だ。一方、党内抗争で〝内輪もめ〟のイメージが広がれば支持層の自民離れを促しかねず、眉をひそめる向きもある。
「このままでは政権交代してしまうとの危機感を持つ人は増えている」
菅義偉前首相は23日公開のインターネット番組で、次期総裁選では新たなリーダーが新たな政策を掲げて臨むべきだとの認識を示した。首相への事実上の退陣要求と受け取れる発言だ。不記載事件に関し、「首相自身が責任に触れず今日まで来ている。不信感を持っている国民は多い」とも述べた。
党中堅・若手からも厳しい声が上がる。16日には斎藤洋明衆院議員が首相の退陣を念頭に「こういう状況に至った責任は最終的に誰かが取らなければならない」と指摘。20日には津島淳衆院議員が同日の党代議士会を欠席した首相を批判した。また、22日には東国幹衆院議員が「再選などと軽々しく口にせず、思いとどまって新しい扉を開く橋渡し役を担ってほしい」と牽制した。
津島、東両氏は総裁選出馬が取り沙汰される茂木敏充幹事長が率いる茂木派(平成研究会)に所属。党内では、発言は領袖の差し金だと疑う声も上がる。同派関係者は茂木氏の関与を否定しつつ、「そうみられるのも必然だ」と語る。
退陣要求はこれまで長野県連など地方組織の幹部から上がっていた。最近は中央でも目立っており、自民中堅は「不満の声はさらに増えるだろう」との認識を示す。