英誌が自民裏金問題にいち早く切り込んだ「しんぶん赤旗」を賞賛 日本の大手メディアの「自己検閲」を懸念(2024年6月23日『クーリエ・ジャポン』)

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自民党派閥の政治資金裏金パーティー問題など、これまで数々の政治スクープを他紙に先駆けて報じてきた「しんぶん赤旗」に英誌「エコノミスト」が注目。その一方で権力におもねり、政治の責任を追求しようとしない日本の大手メディアの姿勢に疑問を投げかける。
日本では2024年1月に通常国会が召集されて以来、主にあるひとつの問題が議論されつづけてきた。
 
2023年末、政治資金を集める目的で開かれていた会費制パーティーの収入を報告書に記載せず脱税したとして、検察は複数の自民党派閥への捜査を開始した。
すでに会計士や議員などを含む自民党関係者が起訴されており、同年12月には閣僚4人、副大臣5人が更迭された。
2024年4月には岸田文雄首相が自民党の重鎮2人である塩谷立文部科学相と、世耕弘成参院幹事長を離党勧告するなど、39人の党員を処分した。
日本を揺るがすこの政治スキャンダルが、日本共産党発行の「しんぶん赤旗」の報道に端を発する事実には驚かされる。同紙はいわゆる大手メディアではないからだ。
大手が触れたがらない問題をスクープ
赤旗」の購読者数は1980年に350万人に達したものの、現在は85万人にまで下落している。それでも同紙は2022年11月、安倍派など5派閥の政治団体がパーティーの収入を政治資金収支報告書に記載していないと、どこよりも早く報じた。
政府資料の入念な調査を経て最初にスクープを出した記者の笹川神由は、「こんな騒ぎになるとは思っていませんでした」と語る。笹川に協力した神戸学院大学の上脇博之法学部教授は、本件を刑事事件として検察に告発している。
赤旗」の報道が、社会に大きなインパクト与えるのは今回が初めてではない。2013年にはいわゆる「ブラック企業問題」を調査し、過酷な労働環境が蔓延していることを世に知らしめた。これにより日本政府は対策に乗り出し、企業に長時間労働などを見直すよう促した。
2019年には、故・安倍晋三元首相が主催していた「桜を見る会」において政治家たちが支持者に公金接待をおこなっていたと報じた。
検察の捜査を受けた安倍元首相は起訴には至らなかったものの、2020年の辞任までこのスキャンダルに悩まされ続けた。
米ラトガース大学で日本や東アジアの近現代史を研究するニック・カプール准教授は、「『赤旗』は皆が恐れて触れようとしない問題を報じてきた」と述べる。
 
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