(黒木 亮:作家)
小池氏が、カイロ大学卒業という虚偽の経歴を50年近くにわたって使用し、カイロでの同居人である北原百代氏らの告発や議会での質問に対して、まともな反論や詳細な説明をせず、有権者を欺き続けており、情状はきわめて重いとして、告発に踏み切ったという。
告発に続き、小島氏は参議院議員会館内で記者会見を開いた。同氏は、学歴詐称の根拠として、卒業証書に書かれたヒジュラ歴(イスラム歴)の年が間違っていることや、卒業証明書の小池氏に関わる動詞や形容詞が男性形で書かれ、監督統括官の署名もないなど、書類上の瑕疵が複数あることを指摘している。さらに北原百代氏の証言、小池氏が主導的役割を果たして発出工作をしたカイロ大学声明なども詐称の根拠であるとし、本件は、外国政府の関与や影響で日本の民主主義が歪められる恐れがある重大な事案であると指摘している。
これらは筆者らも長年にわたって指摘してきた点で、ようやく司法の判断を仰ぐ道筋がつけられたことは感慨深い。小島氏は、知り得る限りの関係者の名前も含めて告発したと述べているので、今後、カイロ大学声明の発出工作に関わった元ジャーナリストのA氏などが、小池氏や樋口高顕千代田区長(都民ファーストの会)らの工作の経緯を明らかにするはずだ。
告発について、小池氏は昨日、報道陣の取材に対し、「選挙に入るにあたってそのような行動をされるのはいかがなものか」と述べただけで、反論らしい反論や批判らしい批判もしなかった。下手に相手を刺激して、名誉毀損等で訴えられ、民事で司法の場に引きずり出されるのを恐れているのは従来通りである。
◎徹底研究! 小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈2〉 卒論の”嘘”
◎徹底研究! 小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈3〉エジプトで横行する「不正卒業証書」
◎徹底研究! 小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈4〉 「不正入学」というもう一つの疑惑
◎【最終回】小池百合子「カイロ大卒」の真偽 卒業証明書、卒業証書から浮かび上がる疑問符
刑事告発や学歴詐称という非難が不当であるなら、相手を誣告罪や名誉棄損で訴えればよいだけの話だ。それをしないのは、自分が学歴詐称をしていることを小池氏自身がよく知っているということだ。今回の選挙にあたって、「AIゆりこ」任せで、街頭演説を避ける方向であることや、昨日の公約発表をオンラインにしたことも、学歴詐称の指摘から少しでも逃げるためだろう。
■ 朝堂院大覚氏の告発
小島氏の刑事告発に先立つこと1週間の6月11日、カイロ時代の小池一家の面倒をみてきた朝堂院大覚氏が都庁記者クラブで記者会見を開いた。同氏の証言については、石井妙子著『女帝 小池百合子』でもある程度触れられているが、表舞台に出てきたことに筆者は、ついに出てきたかという思いを禁じ得なかった。
朝堂院大覚氏は本名・松浦良右(りょうすけ)で、現在83歳。同志社大学法学部を卒業後、船舶専門の空調・冷凍設備メーカー、浪速冷凍機工業(後のナミレイ)に入社し、会長を務めた人物だ。同氏は、エジプト産原油を輸入する事業が左前になり、債権者から追われるようになった小池氏の父・勇二郎氏と小池一家の面倒をみていた。
朝堂院氏は記者会見で、次のような内容を述べた。
小池氏のアラビア語はせいぜい「こんにちは」「さようなら」「あなたが好きです」と言えるレベルで、到底、大学教育に耐えられるものではない。カイロ大学には父親が持っていたエジプトのアブドル・カーデル・ハーテム副首相とのコネで、2年に編入した。しかし、初年度の進級試験の答案はほとんど白紙で、3年生になれなかった。小池氏は大学に行かなくなり、当時付き合っていた岡本秀樹という日本人の空手家と一緒に空手の雑誌をつくりたいと言ってきたため、朝堂院氏が(400万円ほどの)金を出し、カイロで1年ほど空手の雑誌をつくらせた。
これらの証言は、北原百代氏の証言とも符合し、北原証言に匹敵する重大な証言である。
朝堂院氏は、「小池百合子は朝から晩まで嘘をついており、そういう政治家がいると国が亡びる」とも述べた。
■ 岡本秀樹という空手家
岡本秀樹という人物は、国士館大学の出身で、当時、30代前半の既婚者だった。1970年にシリアに渡り、シリア、レバノン、エジプトの警察や軍に空手を教えていた空手家だ。エジプトでは、外国人や富裕層が住むカイロのザマレク地区で「サニー」というスーパーマーケットも経営し、女性関係は積極的だったという。
同氏の生涯については、毎日新聞論説委員の小倉孝保氏による『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』(2020年KADOKAWA刊)という本がある。同書の中には、岡本氏が国士館大学に働きかけてカイロに建設した武道センターの総裁になれなかったハーテム氏が逆恨みし、岡本氏に妻を奪われたエジプト人と結託して、警察と内務省を動かし、食品管理法違反という微罪で、岡本氏を国外追放しようとしたというエピソードが出てくる。権力者の意向で、規則や法律が簡単に捻じ曲げられるエジプトという国の実態をよく表すエピソードである。
■ 学歴詐称疑惑を報じない大手メディアのひどさ
小池氏の学歴詐称に関しては50年近くにわたって疑われ、石井妙子氏が北原百代氏の証言にもとづいて「文藝春秋」2018年7月号に『小池百合子「虚飾の履歴書」』というレポートを発表して以来、積極的な追及がなされてきた。
しかし、追及してきたのは、上田令子議員など都議会の一部、郷原信郎弁護士、フリーのメディア関係者などで、大手メディアは文藝春秋、日刊ゲンダイと、最近になって東京新聞が取り上げる程度にすぎない。テレビや全国紙はいまだにほぼ沈黙状態で、日本のマスメディアはいったいどうなっているのかと思わされる。
大手メディアが本件を取り上げないのは、週刊誌ネタを後追いしたくないというプライドとか、本件はエジプトやアラビア語も絡んでいて一筋縄でいかないとか、東京都からもらう広告料を失いたくないといった理由が指摘されている。
■ 学歴詐称疑惑を報じることはメディアの国家に対する義務
最近、唖然とさせられたのは、学歴詐称の隠蔽にメディアがあからさまに加担した事案である。
朝堂院大覚氏の会見の翌日、知事選出馬を明らかにした小池氏に対するぶらさがり会見で、元朝日新聞記者で現在はフリーの佐藤章氏が「昨日、朝堂院大覚さんが…」と質問を始めるや否や、それにおっかぶせるようにテレビ朝日の島田直樹記者が「今日は勝負服の緑色の服を着ておられませんが、その理由は?」という、どうでもいい質問をして、佐藤氏の質問を遮り、うやむやにしたのである(あまりにも質問が下らなかったので、小池氏ですら笑っていた)。
島田記者がやったことは、権力のチェックというメディアの役割の真逆を行く言語道断の振る舞いで、懲戒処分すべきだと筆者は考える。
小池氏の学歴詐称疑惑は国家の安全保障や民主主義の根幹にかかわる重大な問題であり、これを報じることは、メディアの重大な責務であると筆者は考える。
黒木 亮
とりわけひどかったのが2024年4月19日(金)、テレビ朝日の島田記者はせっかく小池都知事に指されたのに「プロジェクションマッピングせっかくやっても、コンビニが閉まっていては・・・」と、学歴詐称のことでもなく、3選出馬のことでもなく、15区補欠選挙区のことでもなく、小池都知事アシスト質問していました。
テレビ朝日の島田記者は、国民を代表して質問のチャンスを与えられているはずです。国民が聞きたいことを質問せず、小池都知事が有利になる質問しかしません。youtubeで「テレビ朝日の島田記者は小池都知事のポチ」なる記述がありましたが、そう思われても仕方がない質問ばかりしています。
そして、6月12日(水)、テレビ朝日の島田記者は小池都知事の囲み取材のマスコミ幹事として、小池都知事のインタビューを担当しました。一月万冊の佐藤氏が「朝堂院大覚氏が・・・」と質問したのに、その質問に自分の質問「どうして勝負服の緑でないのですか?」とこれまたヨイショ質問。
これは余りにひど過ぎます。自分の代わりに佐藤さんが質問してくれたのに・・・。わざわざそれを邪魔するとは・・・。そこまでして小池都知事を守りたいのでしょうか。あまりにひど過ぎます。マスコミとして、余りにも情け過ぎます。いったいどうしたら、ここまで堕落できるのでしょうか。