「味変」許さぬ「進化系」 ティッシュもなくてしょんぼり(2024年6月16日『毎日新聞』)

松尾貴史のちょっと違和感
キャプチャ
松尾貴史さん作
 「日本の国民食」といえば、すし、天ぷら、おにぎり、そば・うどん、刺し身、すき焼きなど多様だが、外国料理をルーツに持っているのに日本で独自に進化、発展を遂げたものといえば、ラーメンとカレーライスがその双璧と言えるだろう。私の抱いているすこぶる個人的な印象なので、違和感を覚える方がおられてもご容赦いただきたいのだが、ラーメンはどこか体育会系のイメージがある。「◎◎系」が多く語られ、どの名店の流れをくむのかがポイントとなり、師匠と弟子のような、縦の系譜が重要視される。精神論が重んじられ、一球入魂というか、ともすれば、店主の持つ求道者的な世界観が、客を圧倒する。時には、客の作法を叱る様子が「名物」になっている店もあるほどだ。
 そこへいくと、カレーは文化会系というか、名店の流れはもちろんあるのだけれども、どこか横のつながりの方が重んじられている気がする。同業者が仲良くイベントやらライブやらを開いている感じだろうか。多くの店主はアーティスト風であり、自由人で、本職がミュージシャンだったり、イラストレーターだったりすることも多い。いや、どちらが本業かはわからないのだが。くどいようだが、あくまで個人の印象である。