元衆院議員が名義貸し…詐欺被害者に「取り戻せます」と断言して荒稼ぎ 弁護士法違反の疑いで11人逮捕(2024年6月13日『東京新聞』)

 

 弁護士資格のない男女に自らの名義を使わせ、詐欺被害金返還の法律事務をさせたとして、警視庁捜査2課は13日、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで、元自民党衆院議員で弁護士の今野智博容疑者(48)=埼玉県深谷市=を、同法違反(非弁活動)の疑いで、無資格の法律事務をしていた20〜50代の男女10人を逮捕したと発表した。

◆900人から5億円の「着手金」

 捜査2課によると、今野容疑者は2023年9月〜今年3月、無資格者に名義を貸して、ニセ電話詐欺や交流サイト(SNS)型投資詐欺などの被害を受けた全国の約900人から依頼を受け、計約5億円の着手金報酬を得ていた。被害金の返還に至ったケースはほとんどないという。
今野智博容疑者らが詐欺被害金の返還手続きの依頼者を募っていたウェブサイト

今野智博容疑者らが詐欺被害金の返還手続きの依頼者を募っていたウェブサイト

 今野容疑者の事務所は深谷市にあったが、実際に被害者の相談を受けていたのは無資格者らのグループで、今野法律事務所のスタッフを名乗っていた。拠点は東京都内にあったという。「詐欺被害の返金は弁護士にお任せください」「無料相談実施中」などとうたったウェブサイトで依頼者を募り、報酬は今野容疑者が1割、グループ側が9割を分け合っていたとみられる。

◆無資格の10人に「名義貸し」疑い

 逮捕容疑では、今野容疑者は23年12月〜今年1月、10人に弁護士名義を使わせ、詐欺被害に遭った都内などの男女5人の被害金返還請求手続きを助言させたとされる。10人は同時期、無資格で同じ被害者5人に助言し、着手金計約280万円を受け取ったとされる。捜査2課はいずれの認否も明らかにしていない。
 今野容疑者は05年10月に弁護士登録。12年衆院選の埼玉11区に立候補し、比例復活で初当選。17年衆院選で落選するまで2期務めた。
  ◇ ◇
 投資詐欺や暗号資産詐欺などの被害金返還手続きをうたう今野容疑者の事務所の広告サイト(現在は閉鎖)には、返金の見込みをシミュレーションする「返金請求診断」コーナーがあった。

◆どんなケースでも「取り戻せる可能性があります」?

 だが、詐欺被害者の二次被害防止に取り組む笠井・金田法律事務所の金田万作弁護士が昨年12月、診断を試したところ、どんな条件を入れても、「お金を取り戻せる可能性があります」という答えが表示されたという。
 金田氏は「暗号資産でお金を送ってしまった場合、取り戻せる可能性はほぼゼロなのに、何度やっても同じ表示が出る。明らかに怪しかった」と振り返る。

◆「うちの先生は元議員」信用させ

 詐欺の被害金を銀行口座から追跡する労力は膨大。暗号資産の場合は、弁護士1人で回収するのはほぼ不可能だという。今野容疑者は7カ月間で約900人から返還手続き依頼を受けていたとみられるが、「そんなことをできるわけがない。まじめにやろうとしたら無理だ」とみる。
 捜査関係者によると、今野容疑者の名義を借りて被害者の相談を受けていた無資格者らは「うちの先生は元国会議員です」と言って相談者を信用させていたという。金田氏は「社会的信用を悪用し、詐欺被害者からさらにお金を取ることは許し難い」と話した。(佐藤航)
 
 

衆院議員で弁護士の今野智博容疑者を逮捕、名義を貸し詐欺被害者から5億円の着手金を集めた容疑(2024年6月13日『読売新聞』)

 特殊詐欺などの被害金回収をうたい、弁護士名義を貸して無資格者に法律事務をさせたとして、警視庁は13日、元衆院議員で埼玉弁護士会所属の今野智博容疑者(48)(埼玉県深谷市)を弁護士法違反(非弁提携)容疑で逮捕したと発表した。仲間の男女10人も同法違反(非弁活動)容疑で逮捕し、昨年9月以降、全国の詐欺被害者約900人から計約5億円の着手金を不正に集めたとみている。

今野智博容疑者
今野智博容疑者

 発表によると、今野容疑者は昨年12月~今年1月頃、自身の弁護士名義を仲間の男女10人に貸し、詐欺被害金の返還請求手続きを助言させた疑い。10人は同時期、弁護士資格がないのに詐欺被害者の男女5人から着手金計約280万円を受け取った疑い。

 今野容疑者は、自身の法律事務所のホームページで、被害金回収に向けた無料相談に応じると宣伝。相談業務は10人が担い、今野容疑者の名義で被害者と委任契約を交わしていた。

 警視庁は、今野容疑者らが被害金回収の見込みがないのに、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺などの被害者から、1人当たり数十万円~数百万円の着手金を受け取っていたとみて調べている。今野容疑者はこのうち約1割を名義貸し料として受け取っていたという。

 今野容疑者は2005年10月に弁護士登録。12年12月の衆院選で埼玉11区に自民党から立候補し、比例復活で初当選した。自民党青年局次長などを歴任し、17年10月の衆院選で落選するまで2期務めた。

 弁護士法は、弁護士が名義を無資格者に貸す「非弁提携」、弁護士資格がないのに報酬目的で法律事務を行う「非弁活動」をそれぞれ禁じている。詐欺の被害金回収は法律事務にあたる。