多重債務の元音楽家が「運び屋」に、そして自ら「ヤミ金営業」開始か…容疑の女を再逮捕 「まさか」負の連鎖(2024年6月12日『東京新聞』)

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 指定暴力団山口組・旧五菱会系ヤミ金業者の元メンバーら4人のグループが逮捕されたヤミ金事件で、同グループとは別に独自でヤミ金を営んだとして、警視庁生活経済課が11日、貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで、横浜市西区、元音楽教室主宰の伊藤輝代子容疑者(51)を再逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。(小倉貞俊)
◆容疑者宅から携帯電話約100台、他人名義のカード数百枚を押収
 多重債務者のリストを使って法外な利息で金を貸し付け、返済時には他人名義の口座に振り込ませる手口。2018年11月~今年2月の約5年間で約750人に総額2000万円を貸し付け、約1800万円の利益を得ていたとみられる。
 伊藤容疑者は、旧五菱会系ヤミ金業者の元メンバーで無職、針谷恭輔被告(44)=同罪で起訴=を主犯格とするヤミ金グループで、現金の「運び屋」を担っていたとして、針谷被告らとともに先月21日に同容疑で逮捕されていた。
 捜査関係者によると、2月の伊藤容疑者宅の捜索で、針谷被告のグループとは別のヤミ金営業用とみられる携帯電話約100台、他人名義のクレジットカード数百枚などを押収。多重債務者としてグループに加担していた伊藤容疑者が、自身でもヤミ金業を営んでいたことが判明した。旧五菱会系ヤミ金業者が顧客情報を管理していた「センター」と呼ばれる部門から、針谷被告とは別のルートで、顧客名簿や他人名義の携帯電話・口座などを入手したとみられる。
 再逮捕容疑では、21年8月~22年10月ごろ、貸金業の登録がないまま40代の男性ら2人に貸し付けし、法定金利の13~98倍となる超過利息計約88万円を他人名義の口座に入金させ、不当に得たとされる。同課は認否を明らかにしていない。
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◆「自身もヤミ金被害者なのに…」
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 再逮捕された伊藤容疑者は、8年ほど前まで別の名前で音楽家として活動していたが、多重債務に陥りヤミ金業に手を染めることになった。当時を知る複数の関係者は「まさかあの人が…」と絶句する。
 関係者によると、伊藤容疑者は幼少期にバイオリンを、音楽専門の大学・大学院では声楽などを学んだ。都内で音楽教室を開く傍ら、演奏活動なども行っていたという。
 ただ、伊藤容疑者に違和感を持つ人もおり、知人の1人は「収入に見合わない高額な楽器などを購入していた」と振り返る。
 また別の関係者は「容疑者が音楽公演を主催した際、諸事情でキャストが降板したり、観客が集まらなかったりするトラブルがあった」と指摘。多額の出費に追われていた形跡があるという。
 捜査関係者は「多重債務者となり、利息の肩代わりに運び屋などの闇バイトをやらされるうち、自ら犯行を主導するようになったのでは」と指摘。「自身もヤミ金の被害者のはずなのに、さらに被害を広げる『負の連鎖』になってしまった。悩んでいる人は公的な相談窓口などに支援を求めてほしい」と話した。

【女を再逮捕】旧五菱会ヤミ金融事件のノウハウ使いヤミ金経営 警視庁(2024年6月12日『日テレNEWS』)
 
 
旧五菱会をめぐるヤミ金融事件のノウハウを使い、ヤミ金を経営したとして、51歳の女が再逮捕されたことがわかりました。女は多重債務者で、自身の歌のソロリサイタルを開いたころに、ヤミ金からカネを借り始めたとみられています。
■“年利1万804%の超高金利ヤミ金経営で逮捕
捜査関係者によると、出資法違反と貸金業法違反の疑いなどで逮捕された無職の伊藤輝代子容疑者(51)は、2021年8月から2022年10月ごろまでの間、40代の男性ら2人に無登録で複数回にわたり、法定利息の最大98倍でカネを貸し付け、計88万円の利息を違法に得た疑いなどが持たれています。
伊藤容疑者は2018年11月から2024年2月まで、いわゆるヤミ金を経営し、最大で年利1万804%の超高金利で約750件、総額2000万円を貸し付け、利息分として1800万円の利益を得ていたとみられています。
■多重債務者が犯罪者に…返済できず闇バイト、そしてヤミ金業へ
伊藤容疑者をはじめ、今回の事件では自身がヤミ金に手を出し、その後、返済が立ちゆかなくなったことで闇バイトを紹介されるケースがあると、警視庁の捜査幹部は説明します。
伊藤容疑者は闇バイトでだまし取ったカネの運び役を行っていたとみられていますが、警視庁が自宅マンションを捜索した際には、数百枚のキャッシュカードや大量の携帯電話が見つかっていて、犯罪に使うための道具を貸し出す役割もしていたとみられています。
また、パソコンなどを調べた結果、伊藤容疑者自身もヤミ金を経営している疑いがあることがわかり、借金のめどが立たない債務者などに、違法な現金を引き出す出し子や運び役などの闇バイトをさせ、ヤミ金の手伝いをさせるケースが常態化していたとみられています。
■音大出身…初のソロリサイタルでヤミ金に手を染めたか
知人らによると、伊藤容疑者は学生時代、都内の私立音楽大学に通い、社会人になってからもオペラやオーケストラのステージに参加していました。
一方で、音楽関連の事業の失敗などで、一般の金融機関での負債を抱えていたとみられています。
そして2015年ごろ、伊藤容疑者は自身初のソロリサイタルを開催。当時の様子について、リサイタルを見に行った知人は「カネに困っている様子はなかった」と話していますが…。
伊藤容疑者の知人「リサイタルではドレスに相当、おカネがかかっているふうに見えたのと、衣装替えもしていて相当、おカネをかけていたと思います。
(Q.リサイタルを開くのはカネがかかるもの?)
リサイタルをやるのは、かなりおカネかかります。
(Q.リサイタルで儲けはありそうだったか?)
(客からカネをもらわない)ご招待券を配っていたんじゃないかと思う」
ただ、豪華な衣装とは裏腹に、このリサイタルと同時期に伊藤容疑者は、知人の紹介で初めてヤミ金で手を出したとみられています。
■元多重債務者が語るヤミ金の怖さ
今回の事件は、なんらかの事情で負債を抱えた人たちの弱みにつけ込み、ヤミ金で法外なカネを搾取するものでした。
日本テレビは、旧五菱会のヤミ金融事件の被害者で、自身も4000万円をヤミ金に支払ったという女性に話を聞くことができました。
女性は店舗を経営する中で、一度金融機関に融資を受け、その後、突然、別の金融機関を名乗る人物から電話がかかってきたといいます。
旧五菱会ヤミ金融事件の被害者「『短期の融資なんですけど、なんか困ってないですか』みたいな」
こうした言葉や金融機関への返済が近かったことから、安易にカネを借りてしまったという女性。後にこの電話の相手が、ヤミ金だったと知ったといいます。
旧五菱会ヤミ金融事件の被害者「一度借りると、もうあの抜け出せない状況になってしまうんで。あとはマインドコントロールされる。自分は返したつもりでも、逆にまた勝手に振り込んでくるんですね。電話がかかってきて『カネ入れといたからね、また来週いくらいくら返してください』っていうような。だからこう、もう逃げられない状態。夜中に電話かかってきた時に『娘さんいるだろ。いい年頃だよな』みたいな。ゾッとするような。がんじ絡めになってしまってて、そこから抜け出すことができない」
こう被害を語った女性は、今回の逮捕について…。
旧五菱会ヤミ金融事件の被害者「事件に関わってた人が同じことをやってるっていうので、同じような被害者をつくってたのかと思うと、本当に悔しいですね。私も知らず知らずに沼地に、こう足を突っ込んだみたいな状況になってしまって、簡単に借りられるようなところは普通にはないので、そこに一歩でも足を踏み入れることがないようにしてほしい」
警視庁は事件の全容解明を進めています。
 
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