ひところに比べて発言が全体的におとなしくなった感がある…(2024年6月8日『毎日新聞』-「余録」)

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発言が注目されることが多い島根県の丸山達也知事=松江市殿町の県庁で2023年2月、目野創撮影
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闇夜に光る東京都庁プロジェクションマッピング=東京都新宿区で2024年4月2日、上東麻子撮影
 ひところに比べて発言が全体的におとなしくなった感がある都道府県知事の中で、島根県の丸山達也知事は異色の存在だ
▲最近の記者会見で、東京都が実施している都庁舎の壁面に夜間に映像を投影するなどのプロジェクションマッピングを「アンビリーバブル(信じられない)の3乗みたいな事業だ」と批判した。2年分の関連事業の総額が約48億円にのぼることを挙げ、身近な生活分野にあてられないかと疑問を呈した
▲丸山氏の一連の発言には賛否が割れることも多い。だが、底流にあるのは「富める東京」への一極集中に地方が抱く憤りだ。増田寛也岩手県知事らが先日「消滅可能性自治体リスト」を公表した際、丸山氏は「市町村に(責任を)転嫁する問題ではない。東京都は出生率が最低でも、よそから人を吸引できる」と反発した
▲2023年の全国出生率は1・20と過去最低で、8年連続で低下した。とりわけ東京都は0・99とついに1を切った。東京の少子化が加速して人口を他地域からの転入で補い、一極集中と地方の人口減少に拍車がかかる。負の連鎖であろう
▲婚姻の減少対策として都はマッチングアプリ開発も進める。だが子育て支援はもちろん、若者が安心して結婚や育児ができる環境を整えないと構造は変わるまい
島根県出生率は1・46と過去最低だったが、それでも全国6番目の高さだった。首都・東京の出生率0・99が発する警告は重い。国も都も手を尽くさなければ、地方も含めて国全体が沈みかねない。