自動車などの大量生産に必要な「型式指定」の取得に関して自動車メーカーなど5社が不正を行っていた問題で、国土交通省は4日、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社に対して立ち入り検査を始めました。
国交省が立ち入り検査に
今後の国の対応は?
専門家「効率性が追及された結果」
自動車業界に詳しい、東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは、今回、各社で不正が発覚した背景について、「昨今の自動車業界ではスピード重視ということがかなり言われているが、日々の開発の忙しさもあるなかで認証に対する取り組みがおろそかになった側面があったのではないか。また、企画や開発、生産のところで効率性が追及された結果でもあると思う」と述べました。
そのうえで、「今回、不正が表に出たのは国から社内調査の徹底の通達があったからで、内部告発があったためではない。組織的なチェック体制に問題があったと思う」と指摘しました。
一方で、「国の定める型式指定制度のルールと自動車メーカーの開発の現場との間でずれが生じてきたということだと思う。各社の不正防止の対策と同時に、制度自体が時代に即したものかどうかというチェックも、一方では取られるべきということではないか」と述べました。
「型式指定」とは
ダイハツ工業のケースでは?
国交相「各社に立ち入り検査 実施」
斉藤国土交通大臣は4日の閣議のあとの会見で、「自動車ユーザーの信頼を損ない、自動車認証制度の根幹を揺るがす行為であり、極めて遺憾だ。各社に立ち入り検査を実施し、結果を踏まえ厳正に対処してまいりたい」と述べました。
また、斉藤大臣は日本経済への影響を問われたのに対し、「現時点で確認されている限りでは、ダイハツ工業の不正事案に比べ、対象の車種や生産台数は限定的だと認識している」と述べました。
そのうえで「経済への影響を低減する観点からも、出荷を停止する車種が国の基準に適合するかどうかの確認試験を速やかに行う。国民の安全、安心の確保を大前提とするのはもちろんだが、経済への影響を最小限に抑える観点からも、努めてまいりたい」と述べました。
経産相「生産停止で取引先への影響調査」
日本自動車工業会「業界全体で再発防止に全力で」
大手自動車メーカーなどが会員となっている日本自動車工業会は、今回の不正を受け、コメントを発表しました。
この中では「お客様の安全・安心にかかわる自動車製造の根幹の問題として大変重く受け止めるとともに、自動車業界が社会に与える影響を考慮すると、あってはならない事案と認識しております」としています。
そのうえで、「業界全体で再発防止に全力で取り組むべく、当局からの指導に従い、認証申請における不正問題の解決を徹底的に推進してまいります。未然防止対策に業界全体で取り組むことを通じて信頼を回復することに努めてまいります」としています。
経済団体からも非難の声
経済同友会の新浪代表幹事は4日の記者会見で各社の対応を非難したうえで、立ち入り検査の結果によっては、自動車業界全体に影響が広がるという認識を示しました。
この中で、新浪代表幹事は「改ざんが本当にあったということであれば、ゆゆしき事態で、大変遺憾だと思う。消費者や社会の信頼を失う行為になった」と述べ、各社の対応を非難しました。
そのうえで、「今後の立ち入り検査で新たな事実として、実はメーカーが言っているように安全ではないことがわかってくると別だが、そういうことはないだろうと思っている。仮に安全ではないとなれば、自動車業界全体に影響が出てくる」と述べ、国土交通省による立ち入り検査の結果によっては自動車業界全体に影響が広がるという認識を示しました。