高浜原発3、4号機「40年超運転」認可 運転差し止めの仮処分2度の老朽原発を「延命」させる決定(2024年5月29日『東京新聞』)

 
 運転開始から来年で40年となる関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町、稼働中)について、原子力規制委員会は29日、60年までの運転延長を認めた。原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とした現行制度下での延長認可は7、8基目。制度創設当時の民主党政権は60年を「例外」と説明したが、これまでに延長申請した全4原発で認め、完全に「骨抜き」となった。(荒井六貴)

 原発の運転期間 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、2012年に原子炉等規制法を改正して原則40年と定め、1回に限り最長20年間延長できるとした。当時、野党だった自民党も賛成した。岸田文雄首相は22年8月、運転期間の見直しを指示。23年5月に改正電気事業法が成立し、60年超の運転ができるようになった。原子力規制委員会の新規制基準への適合性審査などで停止した期間分を追加できる。

高浜原発(資料写真)

高浜原発(資料写真)

 高浜3、4号機は2015年4月に福井地裁、16年3月に大津地裁で運転差し止めの仮処分が決定し、稼働中だった3号機が史上初めて司法判断で停止した。仮処分を2度出された老朽原発が、今回の認可で延命することになる。両決定はその後に覆されたものの、大津地裁は「避難計画にも疑問が残るなど、住民らの人格権が侵害される恐れが高い」と、今も積み残されたままの問題点を指摘していた。
 高浜3号機は運転開始が1985年1月、4号機は同年6月。関電は昨年4月、運転延長を規制委に申請した。規制委は29日の定例会合で、60年運転延長を認める事務局の案に委員全5人が賛成した。
 通常の核燃料より放射線が強いMOXプルトニウムとウランの混合酸化物)燃料を使っており、原子炉圧力容器の金属の劣化が進んでいる恐れがある。事務局は検査の結果「問題はない」と説明した。2018年ごろからは、老朽化が原因の可能性がある鉄さびで、蒸気発生器の伝熱管の損傷などが相次いで発覚。関電は蒸気発生器を交換する方針を示している。

◆半島の原発、事故時の住民避難は困難

 原発を最大限活用する岸田政権の方針を受け、25年6月の改正電気事業法施行で、60年を超えても原発を運転できるようになる。高浜原発は1号機が運転開始から49年、2号機が48年で、全国で稼働する原発の中で最も古い。60年超運転も現実味を帯びる。
 高浜原発は半島の付け根にあり、事故を起こした場合、半島先端に近い高浜町の音海(おとみ)地区などに住む人たちの避難は困難を極める。また、ともに福井県内にある関電大飯(おおい)原発美浜原発に近く、仮に深刻な事故が同時発生した場合、東京電力福島第1原発以上に収束作業に苦労する恐れがある。こうした特有のリスクを置き去りにしたまま、運転延長が認められた。