人になにか込み入ったことを説明する際、さも能力がありそうに…(2024年5月27日『東京新聞』-「筆洗」)

 人になにか込み入ったことを説明する際、さも能力がありそうに聞こえる方法があると、知り合いの官僚が教えてくれたことがある。「大切なのは、三つです」と前置きし、三つに絞って説明するそうだ。なるほど賢そうだ
▼英国のブレア元首相の「三つ」を思い出した。1996年の演説である。「政権の三つの優先課題はなにか。教育、教育、教育です」。一つじゃないかと言いたくなるが、教育政策に取り組む熱は伝わってくる
▼この方々だって「三つ」を熱っぽく語らなければならないはずである。「再発防止、再発防止、再発防止」と。もちろん、岸田首相と自民党である
自民党派閥の政治とカネの問題を受けた政治資金規正法改正案の審議が進む。が、どうにも歯がゆいのは自民党案の迫力のなさだろう。政策活動費の公開方法や政治資金パーティー券の公開基準。いずれにしても野党ほど厳しくはなく、正直、なにか抜け穴でもあるのではないかと勘繰りたくなる内容である
▼いうまでもなく政治とカネ問題の「火元」は自民党である。その自民党がお金集めに最も都合の良い案を出していたのでは国民は納得しまい
▼政治にカネがかかるのは百も承知だが、歯を食いしばってでも己に厳しい案を出し、問題を二度と起こさぬ決意が見たかった。自民党案を三つのポイントで説明するならば「甘い、甘い、甘い」である。