政治とカネ「規制」されたくない?自民は「自由」を20回も繰り返した 「なぜ10万円」の言い訳には失笑も…(2024年5月24日『東京新聞』)

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院政治改革特別委員会で23日、与野党が提出した政治資金規正法改正案などの本格論戦が始まった。野党は企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止を改革の「本丸」と位置づけるが、自民党は「政治活動の自由」を盾に抜本的な見直しは否定。あくまで再発防止に力点を置く自民案の手ぬるさがあらためて浮き彫りになった。(近藤統義、井上峻輔)
◆「出し手の政治参加の自由を確保する」
 「受け手にとってバランスの良い資金を確保することで、特定の勢力に影響を受けることなく物が言える。出し手も政治参加の自由が確保される」
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衆院政治改革特別委で発言する自民党鈴木馨祐
 この日、最初に質問に立ったのは自民党の政治刷新本部幹事長を務める木原誠二氏。岸田文雄首相の側近だ。木原氏は政治資金規正法の理念を語り、自民の法案責任者を務めた鈴木馨祐氏に、自民案の狙いを聞いた。
 鈴木氏は再発防止の重要性を強調した上で、政治資金集めの基本的な考えとして「特定の組織や人物から自由で、過度に依存することなく、広く薄く集める努力をすることが大事だ」と力説した。2時間半近い審議で、自民議員は「自由」という言葉を20回以上繰り返し、抜本改革を求める野党の質問への防戦に追われた。
◆「選挙関係費1億円」も許される?
 日本維新の会青柳仁士氏は、自民案を「絶望的にお粗末。事件を国民に小さく見てもらおうという下心があり、問題を矮小(わいしょう)化している」と酷評した上で、企業・団体献金の禁止を迫った。鈴木氏は「企業にも政治参加の自由が保障されている」と反論。共産党塩川鉄也氏からも禁止に踏み込まない理由を問われ「今回の事案において政策がゆがめられた、(企業との)癒着があったとの指摘は承知していない」と開き直った。
 政党から党幹部らに渡される政策活動費について、自民案は大まかな項目の使途公開しかしない。青柳氏は「『選挙関係費1億円』と書いても、自民案では許されると理解していいか」と問われ、自民の勝目康氏は「それを見て、判断いただく」と認めた。
 パーティー券購入者の公開基準を巡っては、立憲民主党柚木道義氏が、自民案が公開対象となる購入額を現行の「20万円超」から「10万円超」とした根拠を質問。自民の藤井比早之氏が、現行の政治資金規正法で「その他の収入」の公開基準が「10万円以上」であることを持ち出し「切りがよく、基準として分かりやすい」と答えると、委員会室からは失笑が漏れた。
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