政治資金法改正 野党案を軸に結論急げ(2024年5月25日『北海道新聞』-「社説」)
その際、公開度が低く、抜け穴が多い自民案では議論のたたき台にもならない。実効力が高い野党案を軸にまとめ直さねば、政治不信はかえって高まるだろう。
既に会期末まで1カ月を切った。自民党総裁でもある首相は小手先の改革でごまかさず野党案の受け入れを早急に決断すべきだ。
政党が議員個人に出す政策活動費について、自民案では1回当たり50万円超の支出に限り、大まかな項目別に公開することになる。
野党が特別委で「例えば『選挙関係費1億円』と書いても許されるのか」とただすと、自民党は否定しなかった。領収書の保存や公開は義務付けないとも説明した。
これではブラックボックスを小分けにするだけで、何にいくら使ったのか詳細は全く分からない。
首相は「政治活動の自由の観点から禁止ではなく透明性を高めることが重要だ」と訴えたが説得力がまるでない。「合法的な裏金」とも批判される政策活動費は必要性から考え直すべきではないか。
なぜ10万円超なのかについて自民党は「切りが良く、分かりやすい」からと明確に答えなかった。
首相は「政治活動の自由」を抜本改革を避けるための隠れみのにしてないか。重要なのは党の構造的な金権体質に切り込むことだ。
法改正の前提となる事件の実態解明は依然として進んでいない。
後ろ向きにも程がある。こうした対応を続ける限り、自民党離れは止まらないと自覚すべきだ。
法律や条例の必要性や正当性を根拠付けるデータなどを「立法事実」という。耳慣れない言葉だが、立法府である国会ではよく飛び交う。24日の衆院政治改革特別委員会では自民党の山下貴司氏が、政治資金パーティー開催禁止法案を提出した立憲民主党側にただしていた。
▼山下氏は立民の岡田克也幹事長が20年以上にわたり政治資金パーティーを開き、総額18億円以上の収入を得ていることを指摘したうえで、こう問うたのだった。「売り先との癒着や賄賂性など、禁止すべき立法事実があったということか」。確かにそうした問題がなければ、パーティーを禁止する理由がない。
▼立民では、大串博志選対委員長が6月17日にパーティーを開くことを予定している。「法律が通ったらやらない」と述べているが、不成立を前提としているとしか思えない。山下氏は4月25日に安住淳国対委員長が会費2万円の朝食会を開催し、今月27日には岡田氏がやはり会費2万円の昼食会を催す予定であることも紹介した。
▼朝食会、昼食会も実質的にパーティーと同じ政治資金集めの場である。一方でパーティー禁止を求めておきながら、なぜこんな矛盾した振る舞いをするのか。自民の長尾たかし前衆院議員が月刊『Hanada』4月号に赤裸々に記していた。「私的流用するほど事務所経費に余裕はありませんでした」
▼事務所運営費、秘書給与、固定費の補塡(ほてん)、交通費、会合費…など事務所経費は火の車で、長尾氏の持ち出し分は1千数百万円以上だという。こんな現状を放置してパーティーだけ禁じても、別の金策手段を探るしかない
▼本当に禁止すべきは外国勢力から干渉、影響を受けかねない外国人によるパーティー券購入である。