立憲「パーティー全面禁止法案」の本気度に疑問 2議員が開催予定も問題なし 党議員「選挙目当てだ」(2024年5月24日『AERA dot.』)

キャプチャ
政治資金パーティー禁止法案を衆院に提出した立憲民主党落合貴之・政治改革実行本部事務局長(中央)ら=5月20日、国会
 裏金事件を受けた政治資金規正法改正案をめぐる国会での協議が始まった。そのなかで、立憲民主党が5月20日衆院に提出したのは、政治資金パーティーの開催を全面的に禁じる法案。パーティー券収入を政治資金収支報告書に記載せず、裏金化したことを考えればまっとうな案といえる。ただ、その一方で、党の議員がパーティー開催の案内状を出していたことが判明した。党本部は「法律が成立すれば全員やめる」とのスタンスで、党内からも「選挙目当てのポーズ」といった批判の声があがっている。
キャプチャ2
かつて剛腕で知られた元自民党の政治家はこちら
 政治資金パーティーの開催を直近で予定していることがわかったのは、立憲民主党衆院議員の大串博志(佐賀2区)、階猛(岩手1区)の両氏で、業界団体などに案内状を送っていた。AERA dot.は、(1)案内状の内容の事実確認と、(2)党がパーティー開催を全面的に禁止の法案を提出しているなかでパーティーを開こうとしている理由について、両氏の事務所に質問状を送った。
■法律が成立した後には開かない
 大串氏は、党が改正案を提出した20日前後に、業界団体などへパーティーの案内状を送っている。案内状には「―日本の明日を拓く― 第22回東京大志会定例勉強会のご案内」と書かれ、都内のホテルで6月17日午前11時30分からの開催となっている。会費は2万円。
 大串氏の事務所は文書で回答し、(1)の事実関係については、
「間違いありません」
 と認め、(2)については、
政治資金パーティーを禁止する法律が成立した後には開かないです」
 としている。
 階氏は、今月10日に業界団体などへ政治資金パーティーの案内状を送付していた。
 階氏の案内状は「衆議院議員 しなたけし 第103回 朝食会」と題したもので、6月14日午前7時30分から都内のホテルで開かれる。
 AERA dot. の取材に対し、階氏本人が回答した。
 (1)については、「予定をしていることは間違いありません」と認めた。
 階氏によると、朝食会は国会開会中に月1回開かれている。金融業界を中心に専門家らを講師として呼ぶ勉強会で、5月に開いた朝食会には35人が参加した。会費は1万円で、経費を除いた4千円が収入になる。これまでに計100回以上開催したという。
 今回案内状を送った6月開催分については4月30日に企画したもので、
「講師の依頼もしているため中止にはできない」
 などと説明した。そして、経費を除いた4千円の収入については「パーティー券収入」にはせず、「個人献金」という形で寄付を募り、
「賛同いただけない方は4千円をちゃんとお戻しします」
 と語った。 
「勉強会(朝食会)はこれからも行っていきたい」といい、今回の件で有権者からの指摘はきていないという。
■イコールフッティングではない
 一方、立憲民主党本部にも質問状を送った。
 質問は、
 (1)(大串、階両氏の)政治資金パーティーが開かれることを党本部は認識していたか
 (2)党が政治資金パーティーの全面禁止を掲げる法案を5月20日に提出しているなか、一部の議員が開くことについてどう考えるか
 の2問。文章で回答があった。
 (1)については、
「党所属議員の個々の政治活動について、党本部としては承知しておりません」
 (2)については、
立憲民主党は、政治資金パーティーの開催の禁止について法案を提出しておりますが、本年1月30日の記者会見で岡田幹事長がお答えしている通り、『イコールフッティングではないということになると、選挙戦の結果に直結』することから、法律案の成立に伴い各党が一斉に対応すべきものであり、それまでの間は、従来通り政治資金パーティーの開催に制限を行うことは考えていません」
 とのこと。
 つまり、他の党も同じようにパーティーを禁止にしなければ、自分の党だけ選挙で不利になる、ということなのだろう。
■小沢氏「パーティーの何が悪い」
 今回、立憲民主党が提出した、政治資金パーティーを全面禁止にする法案については、実は党内からも反発、批判の声があがっている。
 同党の衆院議員の小沢一郎氏は21日、
「パーティーの何が悪いのか。規制強化ばかりでは自縄自縛になる」
「政治にカネがかかること自体は変わらない。このままでは大金持ちでなければ政治ができなくなる」
 などと主張。解決策については、
「政治資金を全部オープンにするしかない」
 などと語っている。 
 立憲民主党のある国会議員は、
「政治家というのは楽な仕事ではなくて、経済的にも苦しい。お金が足りないこともしばしば。自民党の一部議員がやってきたような、経費率が低く、利益率が高いパーティーを開くことは絶対にNG。ただ、なんでもダメダメではなく、収支をなるべく丁寧に説明して、国民からの理解を求めることが必要なのでは」
 と党の方針を批判する。
「パーティーの全面禁止なんて絶対に通らない法案。通らないと分かっているから、各議員はパーティーの予定をやめないのでは。とりあえず全面禁止と言って、国民からの良い評判をかき集めたいだけ。パーティー券収入をめぐる裏金問題の根本的な解決に至っていない」(関係者)
■「国民受けを狙っただけのパフォーマンスだ」
 政治評論家の有馬晴海氏は、
「法案を出すのであれば、党内で『パーティー禁止』と宣言したうえで提出すべきだ。自民党が法案を絶対に通さないということを前提に法案を作っていることになる。自分たちは良い子になって、自民党に悪さを押し付けて、次の選挙で勝ちたいという気持ちが優先している」
 と党内の議員が政治資金パーティーを続けながら、禁止法案を出していることを批判した。
 ある党関係者は、
「明らかに法案が通らないことを前提にした、国民受けを狙っただけのパフォーマンスだ」
 と強く指摘している。
 結局は、選挙に有利か不利か、が最優先になるのだろう。
AERA dot.編集部・板垣聡旨)