間接差別」初認定 コース別雇用、見直す契機に(2024年5月18日『河北新報』-「社説」)

 1980年代後半から多くの企業に広がった「総合職」「一般職」のコース別雇用に潜在しがちな男女差別を厳しく指摘した判決だ。

 個々の企業による雇用管理制度の運用実態から「間接差別」の有無を見極めようとする点でも、一歩進んだ判断と言えるだろう。

 男性が大半を占める総合職のみに認められる家賃補助は不当な男女差別だとして、国内ガラス最大手AGCの子会社で勤務する一般職の女性が損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁男女雇用機会均等法が禁じる間接差別に当たると認め、子会社に378万円の賠償を命じた。

 間接差別は、表向き性別以外の要件でありながら、実質的には一方の性には満たしにくい要件を課し、不利益を与える措置を言う。性別を理由とした直接差別に加え、2007年施行の改正法で新たに禁じられた。

 判決によると、女性は08年から正社員の一般職として子会社に勤務。総合職には家賃の最大8割を補助する制度があったが、一般職には認められず、最大1万数千円の住宅手当しかもらえなかった。

 1999年の会社設立時から2020年までに在籍した総合職計34人のうち女性は1人だけ。判決は家賃補助が事実上、男性のみに適用される福利厚生だったと判断した。

 会社側は「総合職にだけ補助を認めているのは転勤の可能性があるためだ」と主張。 だが、判決は総合職であれば転勤の具体的な可能性の有無を問わず補助が認められており、総合職限定である合理的理由はないと退けた。

 女性の代理人弁護士によると、裁判で間接差別が認定されたのは今回が初めて。具体的に何が間接差別に該当するかを定めた厚生労働省令が、募集・採用時に身長、体重、体力や転勤に応じることを要件とした場合などとしていたからだ。

 省令を巡っては以前から、内容があまりに限定的で差別の概念が狭く解釈されると批判されてきた。

 今回の判決が、省令で列挙されたケースに当てはまらなくても、法の趣旨に照らして社内制度の運用実態から差別の有無を判断したことは、専門家からも「画期的」と評価されている。

 コース別雇用では一般的に総合職が幹部候補として中核的な業務に就くのに対し、一般職は総合職の補助やマニュアルに沿った定型的な業務を担うとされる。

 労働者側が選択できるとはいえ、こうした制度が男女別雇用管理の隠れみのとなり、男女の賃金格差を助長してきた面があることは否定できない。

 職務の多様化、複雑化によって補助的、定型的な業務は減少している。雇用管理制度の運用に差別的な取り扱いはないか。企業には不断の点検と改善が求められる。