「下村君がマスコミに持ち込んだという話もある」森元首相が重大証言《自民党裏金問題》(2024年5月17日『文春オンライン』)

「岸田総理が森元総理に対してきちっとその時の件について詳しく聴取をする必要がある」
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森喜朗元首相 ©文藝春秋
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森元首相に名指しされた下村氏
 5月15日、東京都内で講演した下村博文文科相は、自民党の政治資金パーティを巡る裏金事件について語り、岸田文雄首相の責任を追及した。
 政治部記者が語る。
「下村氏が念頭に置いたのは、『文藝春秋』6月号に掲載された 森喜朗元首相のインタビュー でしょう。ノンフィクション作家・森功氏の取材に応じた森元首相は、4月上旬に岸田首相から事情聴取をされた際、裏金問題に関する具体的な質問は無かったことを明かしています。これに対して岸田首相は会見で、『森氏の具体的な関与は確認できていないと申し上げてきた。この発言はまったく変わらない』と苦しい言い訳を余儀なくされています」
「検察のターゲットは森さんですよ」
「文藝春秋」のインタビュー の中で森元首相は、安倍派(清和政策研究会)の会長代理を務めた下村氏の裏金問題への関与についても、次のように明かしていた。
「下村君がマスコミに派閥の資料を持ち込んで売り込んだ、といった類の話もあります。マスコミだけでなく、党の関係者など方々から聞きました。安倍会長が(キックバックを)やめろと言っていた話をひっくり返したのも森だ、と。名前は言えませんが、検察サイドの人からそう聞きました。『検察のターゲットは森さんですよ。気をつけなさい』とアドバイスしてくれた人もいます」
 パーティ券売り上げのキックバックは、安倍晋三元首相が中止するよう指示したものの、没後の2022年8月5日に下村氏と塩谷立文科相世耕弘成参院幹事長、西村康稔経産相ら派閥幹部が会合を開き、還流再開を決めたとされる。それには森元首相の意向が働いたという情報も流れたが、森氏はインタビューで否定している。
「どんな経緯で再開されたか、本当にわかりません。下村君一人だけが、私がそこに関係しているかのように言っているわけです。あの会合に参加している他の誰も、私が関与したなんて言っていません」
「それが下村君なのは、確信を持っています」
 下村氏は、今年3月の政治倫理審査会で、誰の判断でキックバックが復活したのか、「本当に知らない」と答えているが、岸田首相が8月5日の会合に参加した安倍派幹部らに事情聴取したところ、参加者の一人が、森元首相が復活の判断をしたように受け取れる発言をしたという。この発言者について、森元首相はこう語っている。
「それが下村君なのは、確信を持っています。『私の記憶では(裏金作りは)20年ほど前からやってました』と言ったのも、下村君です。なぜ彼がそう言ったのかといえば、私が派閥の会長を務めていた時期に引っかけたいから」
 安倍派の元最高幹部として1年間の「党員資格の停止」の処分を受けた下村氏だが、5月9日には安倍派の最高顧問だった衛藤征士郎衆院議員らと共に築地の料亭で会合。「安倍派の再編に向けた動き」と報じられている。
復権”に向けて動き出す前に、自身の裏金疑惑について真摯な説明が求められるのは言うまでもない。
 240分にわたるインタビュー「 森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る 」は、5月10日発売の「文藝春秋」6月号及び「 文藝春秋 電子版 」で公開中。森元首相は、自身が清和政策研究会の会長を務めていた頃に始まったとされる裏金作りについて詳細に語っている。
 さらに、昨年7月、清和研の会長になることを望んだ下村氏から、2000万円の入った紙袋を持参された際のやり取りの詳細や、今年1月、塩谷氏に対して、「(裏金問題の)全責任を取って仲間を救ってやれ」などと説得したことについても明かしている。
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年6月号