中国の古代神話では…(2024年5月15日『毎日新聞』-「余録」)

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太陽の表面に現れた肉眼でも観察可能な巨大な黒点。強い太陽フレアによって磁気嵐が観測されたり、世界各地でオーロラが見られたりしている=東京都三鷹市で2024年5月10日午前11時36分、手塚耕一郎撮影
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精緻な刺しゅうで中央に3本足のカラスをあしらった中国・明朝「三足烏文壁掛」=滋賀県甲賀市信楽町田代のMIHOミュージアムで2023年3月17日午後0時15分、礒野健一撮影
 中国の古代神話では太陽の中に「三足烏(さんそくう)」がいると信じられた。3本足のカラスは月の模様から想像されたウサギ「玉(ぎょく)兎(と)」と対比される。烏は黒を意味し、肉眼で見えた巨大黒点を指すという説がある
▲歴代王朝も黒点の記録を残した。藤原定家が「明月記」に記した「赤気」をオーロラと比定できたのも、「宋史」の同じ日付に「太陽にナツメのように大きな黒点がある」という記述があったからだという
黒点が増大し、大爆発(太陽フレア)が起きて地球に磁気嵐をもたらす。低緯度の空を彩るオーロラはその副産物だ。神秘現象が社会生活に影響を与えたのが1859年。磁気嵐で電信機に火花が散り、欧米では電報が使えなくなった
▲大型連休明けから観測史上異例の頻度で太陽フレアが発生した。日食メガネを使い、肉眼で見える巨大な黒点群も現れた。だが、オーロラの出現に喜んではいられない。文明の発達につれ、磁気嵐の影響はより深刻化している
▲2週間にわたり太陽フレアや磁気嵐が続くと想定した100年に1度の「最悪シナリオ」が恐ろしい。携帯や無線、放送、衛星、航空などの社会インフラがマヒし、広域停電が起きる。総務省が「宇宙天気予報」の検討会でまとめた
▲来年は11年周期の太陽活動のピークを迎える。デジタル社会の弱点をつく「宇宙天気」の警報や注意報の運用も予定されていると聞く。次代の花形は「宇宙天気予報士」とか。どんな行動や対応を取ればよいのか。わかりやすい解説を願いたい。