フランス議会下院選挙 左派連合が最大勢力 多数派形成は難航も(2024年7月8日『NHKニュース』)

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フランスの議会下院の選挙は7日、決選投票が行われ、左派の連合が事前の予測を覆して極右政党を抑え最大勢力になりました。マクロン大統領率いる与党連合と選挙協力を進めた成果が出た形ですが、両陣営は政策面での隔たりが大きく、議会の多数派の形成は難航することが予想されます。
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フランスでは7日、マクロン大統領が電撃的に解散に踏み切った議会下院にあたる国民議会の選挙の決選投票が行われました。
開票作業はすでに終わり、地元の公共メディア「フランスアンフォ」は、内務省の発表をもとに、左派の連合の新人民戦線が、過半数には届かなかったものの、180議席を獲得して最大勢力になったと伝えました。
また、
マクロン大統領率いる中道の与党連合は、選挙前に比べて議席を100近く減らして158議席
▽極右政党の国民連合は連携する勢力と合わせて143議席を獲得したとしています。
1週間前に行われた1回目の投票では、国民連合と連携する勢力が得票率で首位に立ちましたが、決選投票に向けて新人民戦線と与党連合が200以上の選挙区で候補者を一本化し、国民連合が第1党になるという事前の予測を覆した形です。
選挙の結果を受けて、新人民戦線の一角をなす急進左派の政党のメランション氏は、マクロン大統領に対し「『新人民戦線』に組閣を要請する義務がある」と迫りました。
ただ、メランション氏の政党とマクロン大統領の与党は政策面で大きく隔たり、互いに連立を組むことを拒否しています。
議会の多数派の形成は難航することが予想され、今後の政治の先行きには不透明感が強まっています。
新人民戦線 メランション氏 “マクロン大統領には組閣要請義務”
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左派の連合「新人民戦線」のメランション氏は、選挙の結果について「極右は過半数にほど遠い」とする一方、マクロン大統領についても「敗北は明らかだ。『新人民戦線』に組閣を要請する義務がある」と述べました。
新人民戦線の支持者 大きな歓声
左派の連合「新人民戦線」の支持者が集まったパリ市内の広場では、現地時間の午後8時、議席の予測が伝えられると、一斉に大きな歓声が上がり、抱き合って喜ぶ人や涙を流す人の姿もありました。
30代の男性は、「もっと悲観的な結果を予想していたので、とても驚いています」と話す一方、今後について「政治がどう動くのか、少し心配でもあります。マクロン大統領と『新人民戦線』はあまりにもかけ離れています」と話し、今後の政治の行方に不安ものぞかせていました。
20代の女性は、「とてもほっとしてうれしいです。これは真の勝利です。ただ、国民連合は多くの票を獲得しているので、これからも警戒が必要です」と話していました。
別の男性は、「とてもうれしいです。年金制度や最低賃金の引き上げなど、多くのことが変わることを願っています」と述べ、社会保障の充実に期待を寄せていました。
国民連合 バルデラ党首 与党連合と左派連合の選挙協力を批判
極右政党の国民連合のバルデラ党首は、支持者の前で演説し「マクロン大統領とアタル首相は極端な左派と恥ずべき危険な選挙協力を行った。国を不確実で不安定な方向に向かわせただけでなく、今後、何か月にもわたって日々の厳しい暮らしに国民が対応する手段を奪った」と述べて、与党連合と左派の連合の選挙協力を批判しました。
そのうえで「国民連合はほかの政党とは違い、妥協はしない。国民のそばに立ち、責任を引き受ける用意がある。国を立て直すために力を尽くしたいという意志はかつてなく強い」と訴えました。
国民連合の集会に訪れた人から失望の声
議会下院の選挙の決選投票で、左派の連合が最大勢力になる見通しだとする予測が伝えられたことについて、国民連合の集会に訪れた人からは、失望の声が聞かれました。
20代の男性は、「結果は信じられないです。与党連合にも負けるなんてありえないです」と、目に涙を浮かべ話していました。
50代の女性は、「今夜の結果は残念で、権力を握るまでもう少しだと思っていましたが、違いました。これまでのように戦い続けます」と話していました。
パリ郊外に住む20代の男性は、「残念ですが、いまの議席は倍増するので希望があります。国民がいまの政府にうんざりしていることが今回の選挙で示されました。どの政党も過半数をとらず、きっと近いうちにまた解散も起こるでしょう」と話していました。
アタル首相 辞任の意向明らかに
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フランスのアタル首相は7日、記者団の前で「与党連合は予測の3倍以上の議席を得られたとしても過半数を獲得することはできないだろう。共和国の伝統と私の信念に従って、マクロン大統領に辞表を提出する」と述べ、今回の選挙の責任をとり首相を辞任する意向を明らかにしました。
また「どの勢力も過半数を獲得できない今夜の結果を受け、多くの国民が将来に不安を感じていることは承知している。フランスは前例のない政治状況を経験していて、数週間後にはパリオリンピックで世界の人たちを迎える準備をしている。私はもちろん、必要とされるかぎり職務を全うするつもりだ」と述べ、最後まで職責を果たすことを強調しました。
ことし1月に首相に就任した35歳のアタル氏は、歴代最年少の首相とともに、地元メディアは同性愛者であることを公表している初めての首相だとも伝え、注目されていました。
仏大統領府 “国民の選択が尊重されることを保証”
フランスの議会下院の選挙で左派の連合が最大勢力になる見通しだと伝えられるなか、フランスの大統領府は7日、「大統領は現在、選挙区ごとに結果を把握しているところだ。共和国の伝統に従い、新しい議会の構成を待って、必要な決断を下す。大統領は体制の保証人としてフランス国民の選択が尊重されることを保証する」というメッセージを出しました。